第1章:天井の木目を数える — 永遠と名付けられた沈黙

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適応障害という診断書を渡されたその日、私は建設現場という戦場から強制的に引きずり下ろされた。

最初に襲ってきたのは絶望でも悲しみでもなく、ただただ「何も感じない」という圧倒的な無だった。

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静まり返ったスマホと、止まった世界

昨日まで私のスマホは、通知で埋め尽くされた塊だった。

怒号、依頼、調整、確認——それらが途切れることなく鳴り響いていた。

それが突然、ピタリと止まった。

耳の奥で金属のような耳鳴りが聞こえるほど静かな日常が始まった。

カーテンを固く閉め切った部屋で、私はただ天井の木目を数えるだけの日々を送った。

朝が怖かった。 世界が動き始める音が耐えられなかった。

壁の向こうから漏れてくる「生産性」という歯車の音が、胸に突き刺さるようだった。

布団から這い出すこと——昔は無意識にやっていたその動作が、今では巨大なクレーンで自分を持ち上げるような重労働になっていた。

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「何者でもない」ことの恐怖

無職。

その二文字が、冷たく深く胸に刻み込まれた。

SNSを開けば、かつての仲間たちが堂々と成果を語っている。

自分だけが時間の流れから取り残され、淀んだ水の底に沈んでいくような感覚だった。

「明日になれば良くなる」——そんな言葉は何の救いにもならなかった。

「良くなる」ための土台となる力が、一滴も残っていなかったからだ。

自分という人間の設計図が、修復不可能なほど引き裂かれてしまった気がした。

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泥の中で自分の輪郭を見つける

しかし、その真っ暗な沈黙の中で、私は初めて自分の声に耳を傾けた。

誰かの期待に応えるために作られた「私」ではなく、傷だらけでみっともない、ただ息をしているだけの「私」の声だ。

「生きていてもいいのか?」

その問いに答えはなかった。

泥の中で震えながら、心臓がまだ動いているという事実だけがあった。

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独白

無職の期間中、私は自分を「死んだも同然」だと思っていた。

社会と繋がっていない自分に、価値などないと信じていた。

でも今はわかる。

あの沈黙は、壊れたシステムを修理するための「メンテナンス期間」だったのだ。

たまには完全に電源を落とさないと、回路が焼き切れてしまう。

何もしていないように見えても、心は必死に暗闇の中で杭を打ち直し、「明日」を掴もうとしていた。

動けない自分を責めるな。

それが、生き延びるための最も過酷で、重要な仕事なのだ。

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