「退職届を出そうと思うけど、『依願退職』って書いていいの?」
「上司に『懲戒解雇にするぞ』と脅された。どうしよう……」
退職トラブルでよくある悩みです。
漢字が難しくてビビってしまいますが、仕組みさえ知れば怖くありません。
「依願退職(いがんたいしょく)」とは、文字通り「お願い(願)して、辞めさせてもらう(依)」こと。
つまり、一般的な「自己都合退職」の丁寧な言い方です。
しかし、似て非なる「懲戒解雇」や、会社側が隠したがる「失業保険の罠」を知らないと、退職後の生活が詰む可能性があります。
今回は、元社長であり、どん底から這い上がってきた私が、「あなたのキャリアとお金を守るための退職知識」を徹底解説します。
1. そもそも「依願退職」って何?

依願退職とは、労働者(あなた)が「辞めたいです」と申し出て、会社が「いいですよ」と承諾して労働契約を解除することです。
- 退職願を出す
- 上司と話し合って退職日を決める
- 円満(またはそれに近い形)で辞める
これらはすべて「依願退職」に含まれます。
公務員や大企業のニュースで「不祥事の責任を取って依願退職」と聞くと、「悪いこと」のように聞こえますが、あれは「クビ(懲戒免職)になる前に、自分から辞めることで退職金を確保した」というだけの話です。
一般企業の社員にとって、依願退職は「最もスタンダードで、経歴に傷がつかない辞め方」です。履歴書にも「一身上の都合により退職」と書けます。
2. 最も恐ろしい「懲戒解雇」との違い
絶対に避けなければならないのが、この「懲戒解雇(ちょうかいかいこ)」です。
依願退職とは、天と地ほどの差があります。
懲戒解雇=会社員としての「死刑宣告」
懲戒解雇とは、会社が与える最も重いペナルティ(処罰)によるクビです。
- 退職金: 基本的にゼロ(または大幅減額)。
- 解雇予告手当: 即日解雇のため、もらえないケースが多い。
- 転職活動: 最悪です。履歴書に賞罰として書く義務が生じる場合があり、書かなくても離職票などでバレれば内定取り消しになります。
どんな時に懲戒解雇になる?
「仕事ができない」「遅刻が多い」程度では、日本の法律では懲戒解雇にできません。
- 会社の金を横領した
- 重大な犯罪を犯して逮捕された
- 2週間以上の無断欠勤を続け、連絡も無視した
これくらいのレベルが必要です。
ブラック企業が「言うことを聞かないなら懲戒解雇だ!」と脅すことがありますが、ほとんどの場合はハッタリです。安易に屈せず、労働基準監督署や弁護士に相談してください。
| 項目 | 依願退職(自己都合) | 懲戒解雇 |
| 辞める理由 | あなたの意思 | 会社の処罰 |
| 退職金 | 出る(規定による) | 出ない(ことが多い) |
| 転職への影響 | なし(一般的) | 大ダメージ |
| 経歴書 | 一身上の都合により退職 | 懲戒解雇 |
3. ここが重要!「失業保険」とお金のリアル

さて、ここからが本題です。
依願退職(自己都合)をする際、一番気にしなければならないのが「雇用保険(失業保険)」です。
「自分から辞めます」と言って依願退職した場合、あなたは「自己都合退職」扱いになります。
これには、国からの「ちょっと待った」が入ります。
依願退職(自己都合)のデメリット
- 給付制限がある: ハローワークで手続きをしてから、実際に失業保険が振り込まれるまで「2ヶ月(+待機期間7日)」待たされます。
- 給付日数が短い: 会社都合に比べて、お金をもらえる期間が短くなることが多いです。
つまり、「貯金がない状態で依願退職すると、最初の2〜3ヶ月は無収入で死ぬ」ということです。
私が適応障害で辞めた時も、ここが一番の恐怖でした。
【裏ワザ】依願退職でも「会社都合」にできるケース
もし、あなたが辞める理由が以下のものなら、退職届に「一身上の都合」と書いてはいけません。
- パワハラ・セクハラがあった
- 残業が多すぎた(月45時間超が続いたなど)
- 給料の未払いがあった
- 会社の移転で通勤困難になった
これらは、形式上は自分が辞めると言っても、実質は「会社都合(特定受給資格者)」や「正当な理由のある自己都合(特定理由離職者)」として認められる可能性があります。
これに認定されれば、「2ヶ月の待ち時間なし」ですぐに失業保険がもらえます。
会社は嫌がります(助成金がもらえなくなるから)。
でも、あなたの生活がかかっています。
退職後にハローワークに行く際、「証拠(タイムカードやパワハラの録音)」を持っていけば、会社都合にひっくり返せる可能性があります。
まとめ:言葉の意味を知り、自分を守れ
- 依願退職: 平和的な辞め方。履歴書もキレイ。ただし失業保険は待たされる。
- 懲戒解雇: 犯罪レベルのペナルティ。絶対に避けるべき。
- 会社都合退職: リストラや、やむを得ない事情。失業保険がすぐ出る。
「依願退職」という言葉自体は怖いものではありません。
ただ、その裏にある「お金の受け取り時期」については、シビアに計算してから退職届を出してください。
もし今、あなたが理不尽な理由で辞めようとしているなら、安易に「依願退職」を受け入れず、ハローワークで相談することをおすすめします。
知識は、あなたを守る最強の鎧です。


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