「日本には資源がない」はもう古い?深海6000mに眠る国産の切り札
「日本は資源小国だから、海外から輸入するしかない」 私たちは学校でそう教わってきました。しかし、その常識が今、覆ろうとしています。
日本の排他的経済水域(EEZ)、小笠原諸島の遥か東にある「南鳥島」。その周辺の深海底に、「レアアース泥(でい)」と呼ばれる、とんでもないお宝が眠っているのをご存知でしょうか?
電気自動車(EV)やスマホ、ハイテク機器に不可欠なレアアース。これまで中国に首根っこを掴まれていたこの重要資源を、日本が自前で、しかも大量に確保できる未来がすぐそこまで来ています。 2025年12月に入ってきた最新ニュースを中心に、この夢のプロジェクトの現在地を解説します。
【2025年12月最新】南鳥島に「処理施設」建設へ!国家プロジェクトが加速

これまでは「発見した」「埋蔵量が多い」という研究段階のニュースが主でしたが、いよいよ実用化に向けた具体的なインフラ整備の話が出てきました。
最新ニュース:2027年までに島内に簡易精錬施設を設置。輸送コスト削減が鍵
内閣府の発表によると、政府は2027年までに南鳥島そのものに、レアアース泥の処理施設(簡易精錬施設)を設置する方針を固めました。
なぜ、わざわざ絶海の孤島に工場を作るのでしょうか? 理由は「コスト」です。海底から引き上げた「泥」には、水分や不要な土砂が大量に含まれています。これをそのまま本土まで船で運ぶと、輸送費だけで莫大な赤字になってしまいます。
島の上で泥を処理し、必要な「レアアース成分」だけをギュッと濃縮してから本土へ運ぶ。この効率化こそが、商用化へのラストピースなのです。
今後のスケジュール:2026年1月「ちきゅう」での採掘試験開始〜2028年商用化へのロードマップ
今後の動きは非常にスピーディーです。
- 2026年1月: 地球深部探査船「ちきゅう」を使い、水深5,000m〜6,000mからの試験採掘を開始(最初は数十トン規模)。
- 2027年: 1日350トン規模の大規模試験と、島内処理施設の稼働。
- 2028年度以降: 民間企業へ技術を移転し、商用生産をスタート。
あと数年で、日本の産業構造が変わる可能性があります。
なぜ「レアアース泥」が世界を変えるのか?中国産にはない圧倒的メリット
「でも、採掘コストが高いなら安い中国産を買えばいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、日本のレアアース泥には、コストを補って余りあるメリットがあります。
埋蔵量の凄まじさ:南鳥島だけで世界需要の数百年分
推定埋蔵量は、南鳥島周辺だけで約1,600万トン。これは、世界中の需要の数百年分に相当します。 EVのモーターに使われるジスプロシウムやテルビウムなど、特に希少な「重レアアース」が豊富に含まれており、これを掘り出せれば、日本は一気に資源輸出国になれるポテンシャルを持っています。
安全性の革命:放射性物質がほぼゼロ。「クリーンな資源」だから日本で処理できる
既存の陸上鉱山(中国など)のレアアースには、トリウムやウランなどの放射性物質が含まれていることが多く、その処理に伴う環境汚染が深刻な問題でした。
しかし、日本のレアアース泥は放射性物質をほとんど含みません。 環境に優しく、日本国内で安全に精錬作業ができる。これはSDGsを重視する世界的なトレンドにおいても、非常に強力な武器になります。
どうやって泥から宝を取り出す?日本の技術力が光る「選鉱」の仕組み

深海から泥を吸い上げる技術も凄いですが、そこからレアアースを取り出す技術も日本独自の研究が進んでいます。
秘密は「魚の骨」:レアアースの正体は古代魚の歯や骨?
実は、泥の中でレアアースをたっぷり含んでいる正体は、数千万年前に死んだ魚の歯や骨片(アパタイト鉱物)です。 これらは泥の他の粒子よりも「粒が大きく、重い」という特徴があります。
そこで、遠心力を利用して物質を分離する「ハイドロサイクロン」という装置を使い、レアアースを多く含む粒子だけを選り分けます。これで濃度を中国の鉱山の20倍以上にまで高めることが可能です。
抽出プロセス:希薄な酸で溶かすだけ
濃縮した泥は、薄い塩酸や硫酸に浸すだけで、レアアースが簡単に溶け出します。 岩石を砕いて強力な薬品を使う陸上採掘に比べ、エネルギーも薬品量も少なくて済む、非常に効率的なプロセスが確立されつつあります。
まとめ:2028年、日本は「資源輸出入国」へ。経済安全保障の切り札に期待
2011年の発見から10年以上。研究室の中での話だった「レアアース泥」が、ついにビジネスの現場へと動き出しました。
南鳥島での処理施設建設は、日本が中国への資源依存から脱却し、真の「経済安全保障」を手にするための大きな一歩です。 2026年1月からの採掘試験、そして2028年の商用化。成功すれば、私たちの乗るEVやスマホの中身が、「Made in Japan(の資源)」に変わる日が来るかもしれません。

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