足場の上に初めて立った日のことは、たいてい忘れません。
下を見ると思ったより高くて、足の裏がすっと固くなる感覚があります。
その緊張は、慣れると少しずつ薄れていきます。
でも本当は、その最初の緊張こそ大事にしてほしいものなんです。
私は足場を組む職人やありません。
ただ足場に乗って作業する側も、管理する側も経験してきました。
その両方を見てきて感じるのは、事故を防ぐのは特別な才能やないということです。
これから足場に関わる人へ、まず持ってほしい基本を束ねてお伝えします。
足場そのものの全体像から順に学びたい人はこちらからどうぞ。

事故を防ぐのは基本の積み重ね 結論から
先に結論を言い切ります。
足場の事故を防ぐのは、特別なテクニックやなく基本の積み重ねです。
その基本はこれだけです。
部材の役割を知る・勝手に触らない・点検を軽く見ない・資格と手順を守る・分からないことは聞く。
どれも派手さはありません。
でもこの積み重ねが、自分とあとから乗る人の命を守ります。
まずはこの基本を押さえてください。
そこから一つずつ見ていきます。
なぜ基本がそんなに大事?
理由は、安全の守り方にあります。
足場の事故を防ぐうえでは、基本的な安全措置を一つずつ確実に守ることが重要です。
手すり等の安全設備の不足・点検の見落とし・決められた手順から外れた作業。
こうした基本の抜けを、一つずつなくしていくことが大事です。
そして足場は、自分だけが乗るものやありません。
自分の油断が、あとから乗る人の危険になることもあるんです。
まず部材と足場の意味を知る
なぜ意味を知ることが安全につながる?
最初の基本は、部材の意味を知ることです。
手すり・筋交い・壁つなぎが何のためにあるかを知ることです。
意味を知らないと、ただのパイプにしか見えません。
だから邪魔に感じたときに、軽く扱ってしまいます。
部材の意味を知ると、その一本を軽く扱えなくなります。
これが何のために付いているかが分かれば、勝手に外してはいけない理由も見えてきます。
意味を知ることは、知識のためやありません。
安全につながる、いちばん最初の一歩なんです。
手すりや筋交いが何のためにあるのか、部材の役割はこちらでまとめています。

勝手に触らない 点検を軽く見ない
触りたくなったらどうする?
作業していると、部材が邪魔に感じることがあります。
その気持ちは分かりますが、そこで自分の手で外したらあかんのです。
邪魔でも勝手に外さず、責任者に相談します。
足場の変更は、決められた作業者と手順で行い、変更後の点検も関わる作業やからです。
自分で外すのは一瞬でも、その部材が担っていた安全機能を損なうおそれがあります。
次にそこへ来た人が、外れていると知らずに体を預けてしまいます。
足場を勝手に触ってはいけない理由はこちらで詳しく書いています。

点検はなぜ大事?
もう一つの基本が、点検を軽く見ないことです。
点検は、不備を事故になる前に見つけるための確認です。
強風や大雨や大雪などの悪天候・中震以上の地震・足場の組立てや一部解体や変更の後には、作業を始める前に所定の点検を行う決まりがあります。
足場は、組んだあとも天候や作業で状態が変わっていくからです。
点検表が良好ばかりでも、実際に見ると気になる箇所が出ることがあります。
だから記録だけで安心せず、決められた項目を現物で確認することが大事です。
足場の点検で何を見るのかはこちらでまとめています。

必要な教育・資格と決められた手順を守る 分からないことは聞く
なぜ我流ではだめ?
足場の組立て・解体・変更の作業には、特別教育などの安全衛生上の決まりがあります。
また一定の足場では、技能講習を修了した者から作業主任者を選任します。
誰でも思いつきでやっていい作業やないということです。
我流や思い込みで進めると、必要な安全措置を外すおそれがあります。
決められた教育や手順には、安全に作業するための知識や災害防止の考え方が含まれています。
それは机上の話やなく、現場で人を守るためのものです。
そしてもう一つ、分からないことは自分で判断しないことです。
迷ったら、そのまま進めず聞く。
これは恥ずかしいことやありません。
分からないまま進めて事故を起こすより、聞くほうがずっと現場のためになります。
足場を組む作業に必要な特別教育についてはこちらで詳しく書いています。

自分が組んだ足場に人の命が乗る まとめ
最後に、いちばん大事なことです。
足場は、自分だけのものやありません。
自分が関わった足場には、あとから何人もの職人が乗って作業します。
塗装も設備も電気も、みんなその足場を信じて体を預けます。
ここまでの基本は、全部そこにつながっています。
部材の意味を知り・勝手に触らず・点検を軽く見ず・手順を守り・分からないことを聞く。
どれも、自分とあとからその足場を使う人を危険にさらさないためにあります。
自分の油断が誰かの命に届くと思えば、基本の重みが変わってきます。
足場を組んでいた先輩が、新人に短くこう言うのを何度か聞きました。
「倒すなよ」。
軽い一言に聞こえて、この三文字に足場のすべてが詰まっています。
自分が触る一本の先に、あとから乗る人がいる。それを忘れんとってほしいんです。
本日もご安全に!

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