ガス溶接の炎を怖いと思っていませんか。
確かに炎は熱い。
でも私が本当に怖いと思っているのは炎やありません。
その足元に立っている一本のボンベです。
今日はその話をさせてください。
1. ガス溶接で本当に怖いのは「炎」やない
炎は目に見えるから誰でも警戒する
ガス溶接の火口から出る炎は数千度です。
鉄をあっさり溶かす熱があります。
これは確かに危ない。
でも炎は目に見えます。
赤い。
熱い。
近づけば顔が焼ける。
だから誰でも本能的に警戒するんです。
見えている危険は意外と事故になりません。
人が身構えるからです。
本当の恐怖は目に見えない高圧ガスが詰まったボンベのほうや
本当に怖いのはその手前です。
炎の元になっているボンベです。
あの鉄の筒の中には高圧のガスが詰まっています。
目には見えません。
音もしません。
静かに立っているだけです。
でも一歩間違えれば爆発します。
炎は一点を焼くだけです。
でもボンベが爆発すれば周り全部を吹き飛ばす。
見えないからこそ人は油断する。
そこに一番の恐怖があるんです。
2. 最近ボンベの吹き出し事故が増えた気がする
夏場になると近所の工場からプシューという音が聞こえる
これは私の実感の話です。
最近ボンベの吹き出し事故が増えた気がしています。
特に夏場です。
近所の工場のほうからプシューという音が聞こえることがある。
あれを聞くたびに背筋が寒くなります。
昔はこんなに感じませんでした。
数字で証明できる話やありません。
でも現場で長年ガスを扱ってきた人間の勘です。
何かが変わってきていると感じるんです。
暑さでボンベ内の圧力は上がりやすい。直射日光の下に放置するのがどれだけ危ないか
理屈ははっきりしています。
ボンベの中のガスは温度が上がると圧力も上がります。
だからルールで決まっているんです。
容器の温度は常に40度以下に保つこと。
これを超えると圧力が異常に高くなります。
特にアセチレンは40度を超えると自己分解して爆発の危険がある。
それやのに夏の炎天下にボンベを転がしておく人がいます。
直射日光の下でアスファルトの上です。
真夏のアスファルトは50度を軽く超えます。
そこにボンベを寝かせて放置する。
これがどれだけ危ないか分かりますよね。
だからこそ保護キャップは必須や。運搬時にバルブを守るあの一手間が命を守る
そしてもう一つ大事なのが保護キャップです。
ボンベの首についているバルブ。
ここが一番弱い部分です。
運搬中に倒してバルブが折れたらどうなるか。
中の高圧ガスが一気に噴き出します。
ボンベがロケットみたいに吹っ飛ぶこともある。
それを防ぐのが保護キャップです。
運ぶときは必ずバルブにキャップをかぶせる。
たったこれだけの一手間です。
面倒くさがってこれを省く人間がいます。
そのキャップ一つが命を守る蓋なんです。
ついでにもう一つ。
アセチレンのボンベは寝かせて置いたらあかん。
中に溶剤が入っていて横にすると流れ出す恐れがあるからです。
アセチレンは必ず立てて置く。
これも法律で決められた扱い方なんです。
同じ火花でも溶接で目をやられる話は別に書いた。
アーク溶接の恐怖はこっちや。

3. ガスを知らずに使う人間が一番危ない
私はガスをよく使う。だからこそガスがどれだけ危険なものか身に染みている
私は現場でガスをよく使います。
切断も溶接も日常です。
だからこそ言えることがあります。
ガスがどれだけ危険なものか身に染みているんです。
毎日触るからこそ怖さを知っている。
ボンベを立てて固定する。
直射日光を避ける。
バルブは静かに開ける。
口金の油やゴミを拭き取る。
特に酸素のボンベに油は厳禁です。
高圧の酸素は油に触れただけで発火することがあるからです。
手袋の油汚れ一つが火のもとになる。
一つ一つが体に染みついています。
慣れは油断やありません。
慣れるほど丁寧になるのが本当のプロです。
アセチレンは逆火や衝撃に弱い。扱いを一つ間違えれば大事故になる
アセチレンというガスは特に気難しいんです。
衝撃に弱い。
熱に弱い。
そして逆火というものがあります。
これは火口の炎が逆にホースを遡ってくる現象です。
そのまま容器まで火が伝わると中で分解爆発を起こす。
だから逆火防止器という装置をつけるんです。
扱いを一つ間違えれば大事故になる。
ここでは具体的な事故の起こし方は書きません。
真似されたら困るからです。
ただ気難しいガスやということだけ覚えてください。
ガス溶接技能講習で初めて、自分が毎日触っているガスの本当の顔を知る
そしてこの怖さを体系立てて教えてくれるのがガス溶接技能講習です。
これは労働安全衛生法で定められた資格です。
可燃性ガスと酸素で溶接や切断をするなら修了が必要になります。
私もこの講習を受けて初めて分かったことがありました。
自分が毎日触っているガスの本当の顔です。
なぜ40度以下なのか。
なぜ立てて置くのか。
なぜ逆火防止器が要るのか。
全部に理由があったんです。
なんとなく守っていたルールに命が懸かっていたと知りました。
ここで一つ混同を潰しておきます。
同じ溶接でもアークは特別教育です。
でもガス溶接は技能講習で区分が一つ上なんです。
扱うのが高圧ガスやからそれだけ重く見られている。
片方を持っていてももう片方の代わりにはなりません。
4. 見えない圧力を見える人間だけが生き残る
知識だけがボンベの中を透かして見せる
最後に一番伝えたいことを書きます。
ボンベの中は目に見えません。
どれだけ圧力が上がっているかも見えない。
逆火が起きる条件も見えない。
その見えないものを見えるようにするのが知識です。
理屈を知っている人間はボンベを見ただけで身構えます。
夏の日向に置かれたボンベに寒気を感じる。
知らない人間はただの鉄の筒にしか見えません。
その差が事故の分かれ目になるんです。
そしてこの知識です。
現場で毎日ガスを使う人間ほど早く身につけるべきです。
その取り方については次の記事で話します。
ボンベは眠っている獣と同じやと思うんです。
おとなしく立っているうちは何もしません。
でも扱いを誤って起こせば一瞬で牙を剥く。
その獣の性質を知っている人間だけが背を向けずに付き合えるんです。
見えない圧力を見る目を持ってください。
本日もご安全に!

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