ボルトをガチガチに締めたら水は止まる。
そう思ってませんか。
止めてるのはボルトやないんです。
今日はその話をさせてください。
1. 導入:圧力を止めてるのは金属やない
配管とフランジを繋ぎますよね。
ボルトを何本も入れて締め上げていく。
若手はここで安心するんです。
これだけ締めたらもう漏れんやろと。
でも違います。
フランジの面と面は直接くっついてません。
その間に数ミリのガスケットが挟まってるんです。
パッキンとも呼びますね。
本当に圧力を止めてるのはこの数ミリの一枚なんです。
ボルトの仕事は締めることやない。
ガスケットを潰す力を与えることなんです。
そしてここからが本題です。
このガスケットの材質を間違えたらどうなるか。
試運転で圧をかけた瞬間。
中身が噴き出します。
熱湯かもしれん。
薬品かもしれん。
その先に人が立ってたら終わりです。
たかがゴム輪やろ。
その認識で人が死ぬんです。
ガスケットを挟む前にフランジ自体の規格を間違えていたら元も子もありません。現場が地獄になる5Kと10Kの話はこれです。

2. 万能やない「ノンアス(ジョイントシート)」の限界
現場で一番よく見るのが緑や青のシートです。
ノンアス。
正式にはノンアスベストのジョイントシートです。
昔はアスベストが使われてました。
それが禁止されて代わりに出てきたからノンアスと呼ばれてます。
中身はNBRとアラミド繊維と無機充填材。
それを混ぜて固めたシートです。
安い。
切りやすい。
現場に転がってる。
だからみんなとりあえずこれを使うんです。
水なら十分です。
空気も問題ない。
でもそこには明確な限界があります。
一般的なグレードで見てください。
最高使用温度は150℃くらいです。
圧力は水系で2MPaくらい。
ガス系ならもっと低くて1MPa程度です。
そして流体の適合範囲も決まってます。
水。
熱水。
海水。
石油系の炭化水素。
アルコール。
動植物油。
そして酸とアルカリ。
ただしここが大事です。
弱酸と弱アルカリまでなんです。
強酸はあかん。
強アルカリもあかん。
ここに「とりあえずノンアスでええやろ」を持ち込んだらどうなるか。
シートが薬品に負けます。
繊維とゴムが侵されてボロボロに崩れていく。
最初は滲む程度です。
でも崩れたら一気に抜けます。
そして高温も同じです。
150℃までのシートを蒸気ラインに入れる。
熱でゴムのバインダーが死んでシートが固化する。
弾力を失って漏れ始めるんです。
とりあえずノンアス。
その一言が一番危ないんです。
3. 薬品の最強の盾「テフロン(PTFE)」と滑りの罠
じゃあ薬品ラインはどうするか。
テフロンです。
正式にはPTFE。
真っ白なやつですね。
これは化学薬品に対してほとんど無敵です。
強酸でも強アルカリでも平気。
プラスチックの王様と呼ばれるくらい化学的に安定してます。
食品や医薬品にも使えます。
汚染しないからです。
でもPTFEには致命的な弱点があるんです。
クリープです。
コールドフローとも言います。
どういうことか。
PTFEはツルツルしてますよね。
そして柔らかい。
ボルトで締め付けるとその圧力から逃げようとするんです。
横にじわじわ滑って逃げていく。
締めた時はガチガチでした。
でも時間が経つと材料が逃げて薄くなる。
薄くなった分だけボルトが緩むんです。
締め付けの力が抜ける。
応力緩和です。
そして漏れます。
だから増し締めが要るんです。
組んだ後しばらくして締め直す。
これをサボったら必ず漏れます。
そしてもう一つ。
このクリープは温度が上がると一気に悪化します。
だから現場ではこう言われてます。
PTFEは100℃までやと。
これが100℃の壁です。
じゃあ100℃を超える薬品ラインはどうするか。
充填材入りPTFEを使います。
無機質の充填材を混ぜてクリープを抑えたやつです。
これでだいぶマシになります。
でもここで絶対に知っといてほしいことがあります。
充填材を入れた瞬間、PTFE本来の耐薬品性が一部犠牲になるんです。
たとえばシリカ充填のもの。
シリカはガラスの主成分です。
これはフッ酸に侵されます。
強アルカリにも侵されます。
つまりこういうことです。
100℃超えるからとりあえず充填材入りにしとこ。
その短絡的な判断が事故になる。
温度で選んだら薬品で負ける。
薬品で選んだら温度で負ける。
その天秤を自分で理解して選ばなあかんのです。
配管の途中で流体を止めるバルブ選びも同じくらい重要です。絶対に間違えてはいけないバルブの使い分けはこっちです。

4. 高温高圧のバケモノ「うず巻形(ボルテックス)」
蒸気ライン。
高温高圧の油。
こういう場所には普通のシートでは話になりません。
そこで出てくるのがうず巻形ガスケットです。
ボルテックスとも呼ばれてます。
構造が面白いんです。
薄い金属のフープ材と充填材。
これを交互に重ねて渦巻き状に巻いてある。
だから断面がバネみたいになってるんです。
締め付けるとその渦巻きが潰れる。
そして金属の反発力でフランジ面を押し返す。
熱で配管が伸び縮みしてもそのバネが追従する。
だから高温でも密着が維持できるんです。
充填材を選べばとんでもない温度まで持ちます。
750℃まで対応する製品もあるんです。
でもここで正直に言うときます。
うず巻形は絶対でも最強でもありません。
理由は二つあります。
一つ目。
あれは金属を潰して密着させる構造です。
つまり潰すための締付力が前提なんです。
ボルトの本数もサイズもそれに見合ってなあかん。
締付力が足りなければ渦巻きが潰れきらん。
潰れなければ漏れます。
うず巻形を入れたのに漏れる。
その原因が締付力不足やったという話は珍しくないんです。
二つ目。
もっと過酷な条件にはリングジョイントという世界があります。
うず巻形はあくまで一つの選択肢です。
その上があるんです。
そして最後に一番大事なこと。
うず巻形はフランジ面が命です。
面に傷がある。
サビが残ってる。
古いガスケットのカスがこびりついてる。
そんな状態で締めても密着しません。
その傷を伝って流体が抜けていくんです。
だから事前のケレンが命なんです。
面をしっかり掃除して平らを確認する。
その数分が噴出事故を防ぐんです。
5. 結論:ガスケットは配管の「一番弱い場所」だ
配管ラインを想像してください。
管は鋼です。
フランジも鋼です。
ボルトも鋼です。
その中でたった一箇所だけ違うものが挟まってる。
それがガスケットです。
ラインの中で一番弱い場所なんです。
鎖は一番弱い輪から切れます。
配管も同じです。
漏れるのはいつもガスケットの場所なんです。
だからこそそこを選ぶ時が一番慎重にならなあかん。
何が流れるのか。
何℃か。
何MPaか。
酸か。
アルカリか。
その濃度は。
そして溶接した後に熱がかかるのか。
増し締めができる場所か。
その全部を理解して最適な一枚を選ぶ。
倉庫にあったからノンアス。
薬品やからテフロン。
その雑な選び方が誰かの顔に薬品を浴びせるんです。
数ミリのシートに現場の命がかかってる。
それを忘れんでください。
本日もご安全に!
の選定ミスで配管から薬品が噴き出す現場のリアル.jpg)
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