仮付けなんて位置が決まればええやろ。
見習いの頃の私はそう思っていました。
その甘い考えが本組みと本溶接で返ってきます。
引っ張られて直角が出ず組んだ物をばらす羽目になりました。
仮付けは仮の溶接です。
ですがその仮の溶接が後の工程を左右するんです。
仮付け(タック溶接)とは?本溶接の前に位置を固定する点付け
仮付けとは何か。
仮付けとは本溶接まで部品の位置関係を保つために行う仮の溶接のことです。
現場ではタック溶接とも呼びます。
本溶接でがっちり付ける前に部品どうしをちょんちょんと留めておく作業です。
私が組んできた仕事では位置を合わせて仮付けで保持してから本溶接へ進めていました。
まず位置を決めて固定してから本番に入るわけです。
仮付けは何のためにやるのか
仮付けの役割は位置決めです。
組む部品がずれないように先に留めておきます。
複数の部品を図面どおりの形に組みます。
その形を保ったまま本溶接へ持っていくために仮付けをするんです。
ここがずれると後が全部ずれます。
だから仮付けは小さくても組立の土台になる作業なんです。
タック指示があるときはどうするのか
図面にタックの指示がある場合があります。
どこを仮付けするか図面で決まっているケースです。
私はこういうときタックを先にケガいてその指示箇所に仮付けしていました。
指示された位置を材料に写してからそこに点付けするわけです。
指示がある場合はその指示を確認して仮付けします。
図面の意図に沿って留めるのが基本なんです。
図面を材料に写すケガキと現図についてはこの記事でまとめています

仮付けでも溶接は引っ張る。だから順番と向きを考える
仮付けを甘く見たらあかん理由がここです。
小さな点付けでも溶接は溶接です。
仮付けでも加熱した部分が冷えて収縮するため部材の位置や形に影響することがあります。
点が小さいから大丈夫やろと油断すると形が狂います。
どこをどう仮付けするかはその後の形や本溶接に影響します。
私は順番や向きも意識していました。
なぜ仮付けで歪みが出るのか
溶接は熱で溶かして冷えて固まります。
冷えるときに縮むから母材を引っ張ります。
これは仮付けでも同じです。
小さな点でも打った場所が縮んで部品を引き寄せます。
収縮の影響が偏ると部品の傾きやねじれにつながることがあります。
仮付けの向きや順番も歪みにからんでくるんです。
仮付けの引張がなぜ歪みにつながるかはこの記事で解説しています

逆ひずみや打つ順番でどう工夫するのか
引っ張るのが分かっているなら先に手を打てます。
私がやっていたのは変形を見越した仮付けです。
私は品物によっては溶接後の変形を見越して逆方向へ見込むこともありました。
こうした考え方は逆ひずみと呼ばれます。
どれだけ見込むかは品物や条件で変わります。
ここは数字で割り切れるものやなく経験と施工要領の世界です。
打つ順番も工夫していました。
私がやっていた現場では片側だけに偏らないよう仮付けの順番を散らすこともありました。
表裏表裏や千鳥のように散らすこともありました。
片側ばかり先に留めるとそっちに引っ張られるからです。
仮付けでやらかした失敗と気をつけること
ここからは私がやらかした話です。
仮付けを軽く見て痛い目を見た三つの失敗です。
ケガキ線の上に溶接するとどうなるのか
一つ目はケガキ線の上に仮付けしてしまった失敗です。
基準にしていたケガキ線が溶接で消えました。
ケガキ線は組立の基準です。
その線を見ながら位置を合わせていきます。
なのに線の上に溶接したら基準が分からなくなります。
どこに合わせればいいのか見失って手が止まりました。
それ以来、基準にしているケガキ線を消さない位置で仮付けできるか先に考えるようになりました。
基準の線を残すのは組立の土台を守ることなんです。
引っ張って直角が出なくなったらどうなるのか
二つ目は引っ張って直角が出なくなった失敗です。
仮付けの引きを甘く見て部品が傾きました。
直角に組むはずの物が直角にならん。
こうなると組んだ物をばらしてやり直しです。
やり直すと切ったり擦ったりで見た目が汚くなります。
私が扱っていたSUSでははがして手直しすると跡が目立って困ることがありました。
一度付けた物をはがすのは手間も見た目も損します。
だから最初の仮付けで引張を読むのが大事なんです。
仮付けの棒やワイヤーを適当にするとどうなるのか
三つ目は仮付けの棒やワイヤーを適当に選んだ失敗です。
仮付けやからと軽く考えて選びました。
仮付けも本溶接につながる溶接部です。
本溶接に残す仮付けなら材質や施工条件に合った溶接材料を使い、欠陥のない状態にしておく必要があります。
タック溶接のような短いビードでも条件や材質によっては不具合が出ることがあります。
仮付けだから何でもええわけやないと後から知りました。
ブローホールやアンダーカットなど代表的な溶接欠陥はこちらにまとめています

まとめ
仮付けの話をまとめます。
仮付けは本溶接まで部品の位置を保持するための仮の溶接です。
組立の土台になる大事な作業です。
ですが小さくても溶接は収縮します。
仮付けの位置や順番などによっては歪みや直角の狂いにつながることがあります。
そして仮付けの棒やワイヤーを侮ると本溶接に響きます。
基準のケガキ線を消さないことも忘れたらあかん。
仮付けは名前のわりに軽く見られません。
最初のちょんちょんが後の工程にずっと効いてきます。
そこだけは覚えて損はないはずです。
本日もご安全に!
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