寄りの写真ばかりがずらりと並んでいる。
配管の継ぎ目も金物の取り付けもよく写っているのに、それがどこの何なのか誰にも分からない。
撮った本人は現場を覚えているので困りません。
でも工事写真は、撮った本人以外が見るものです。
私は公共工事や補助金関連の工事も含めて、工事写真を自分で撮ってきました。
その経験から、工事写真の引きと寄りの考え方を書いていきます。
引きと寄りはセットで撮る 結論から
工事写真の引きと寄りは、どちらか一方ではなくセットで撮るものです。
引きでどこかを伝え、寄りで何をしたかを伝える。
引きと寄りとは何?
引きは、離れて広い範囲を撮る写真で全景とも呼びます。
寄りは、近づいて施工した部分を大きく撮る写真で近景とも呼びます。
その間に、少し周りを入れて撮る中景という呼び方もあります。
全景・中景・近景と段階を踏むと、見る人が場所から中身へ自然にたどれます。
なぜセットで撮るの?
引きだけでは、場所は分かっても中身が見えません。
寄りだけでは、中身は見えても場所が分かりません。
引きで「どこか」を、寄りで「何をしたか」を伝える。
だから二つはセットで撮ります。
図面でいえば、全体の組み上がりを見せる組図と、一つずつの部品を見せる部品図の関係に近いと思います。
どちらか片方だけでは、見る人が頭の中で組み立てられないんです。
全体を見る図面と一つずつを見る図面の関係はこちらで書いています

引き(全景)はどこまで入れる?
引きで何を伝える?
引きで伝えるのは、その写真がどこで撮られたかです。
施工した部分が周りの何とどういう位置関係にあるかを、一枚で見せる役目があります。
どこまで入れればいい?
第三者が場所を特定できる目印が入るところまで引きます。
既存の建物・柱・通り芯の番号・設備の番号札などが、よく目印になります。
通り芯とは、建築図面で柱や壁の位置の基準になる線のことです。
番号札は、設備や機器を見分けるために付けられた番号の表示です。
目印が一つ入るだけで、見る人は図面と照らし合わせて場所を追えます。
どれを目印にするかは現場によって違うので、その現場で共通して使っている呼び方に合わせるのが一般的です。
引きすぎると何が困る?
引きすぎると、肝心の施工箇所が小さくなって何を撮ったのか分からなくなります。
黒板の字も小さくなり、読めなくなることがあります。
広く撮れば安心というわけではありません。
場所が分かる範囲で、施工箇所がちゃんと主役に見える距離を探します。
寄り(近景)で何を見せる?
寄りで何を伝える?
寄りで伝えるのは、施工した中身とその状態です。
使った材料・取り付けの様子・仕上がりなど、見てほしいものを大きく写します。
寄りすぎると何が困る?
寄りすぎると、どこの何の部分なのか分からない写真になります。
極端に近づいた写真は、別の場所の写真と見分けがつかないこともあります。
周りが少し入る程度の余白を残しておくのが一般的な考え方です。
余白があれば、引きの写真と見比べた時にどの部分かがつながります。
位置関係が伝わる撮り方は?
引きから寄りへはどう撮る?
同じ方向から引き→中景→寄りと順に近づいて撮ると、見る人が迷いません。
写真を並べた時に、場所から中身へ視線が自然に寄っていく流れができます。
撮る方向がばらばらだと、同じ場所でも別の場所に見えてしまいます。
一つの箇所は一つの方向から追いかけるのが基本です。
撮る向きはどう決める?
どこから見た写真なのかが分かる向きで撮ります。
どの面を正面として見せるかを決める考え方は、図面と同じです。
一枚で伝わる正面をどう決めるかは図面の考え方がそのまま使えます

私は着工前の「初めの状態」も、引きと寄りで撮っていました。
傷が前からあったのかどうかを、後から説明できるようにするためです。
着工前と完成を同じ位置と向きで撮っておくと、前後の比較がしやすくなります。
向きを合わせるだけで、変わった所が一目で伝わるようになります。
黒板はどこに入れる?
引きの写真では黒板の字が小さくなりがちです。
黒板は寄りの写真で読めるように入れるのが扱いやすいと思います。
私は一人で撮ることがほとんどで、小型のホワイトボードを使っていました。
小型のボードは、寄りの写真でこそ字がしっかり読めて生きてきます。
ただし黒板で施工箇所を隠してしまっては意味がありません。
主役は施工した部分で、黒板はその邪魔にならない位置に置きます。
迷ったら引きと寄りを多めに撮る
何枚撮ればいい?
発注者や工事の決まりがあれば、それに従います。
公共工事では、国土交通省の土木工事で使われる写真管理基準(案)の撮影箇所一覧表に、工種ごとの撮影項目や撮影頻度が示されています。
写真管理基準とは、工事写真の分類・撮影箇所・撮影頻度などを定めた基準です。
この基準では、撮影箇所が分かりにくい場合に見取り図などを参考図として添える考え方も示されています。
決まりがなければ多めに撮っておきます。
私がずっと伝えてきた言葉が「引きと寄りを多めに撮っておいて。そうすれば後でどうにかなる」です。
写真が多ければ、後から必要なカットを選べて説明の材料も残ります。
撮らなかった写真は後から選べません。
多めに撮った写真はどうする?
多めに撮った写真は、必要なカットを選んで使います。
溜め込まずに、その日のうちに仕分けする習慣を付けておくと後が楽です。
そして後から加工したり別の写真を流用したりはしないでください。
多めに撮るのは選ぶためであって、足りない写真を取り繕うためではありません。
引きを撮るときほど足元を見る
引きの写真で危ないのはどこ?
引きを撮ろうと後ずさりすると、知らないうちに開口部・足場の端・段差・重機や車両の動線に近づいてしまうことがあります。
カメラの画面を見ている間は、足元も背後も見えていません。
後ろ歩きで構図を探さないでください。
立ち位置の安全を先に確かめてから、足を止めて撮ります。
高所・開口部・重機や吊荷の周り・稼働中の設備の近くでは、安全が確保された位置から撮ります。
撮影より安全が先です。
写真は見る人のために撮る まとめ
工事写真の引きと寄りは、引きでどこかを、寄りで何をしたかを伝えるためのものです。
二つはセットで撮り、決まりがなければ多めに撮っておきます。
どう撮るかは発注者や工事の決まりで変わることもあります。
そのうえで、撮った本人以外が見ても分かるかどうかを基準にしてみてください。
引きは地図で、寄りは虫眼鏡です。
地図で場所を示してから虫眼鏡で中身を見せれば、初めて見る人でも迷いません。
本日もご安全に!

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