工事が終わった後に「この傷って前からありました?」と聞かれる。
記憶をたどっても、手元に着工前の写真がなければ答えようがありません。
施工管理や現場監督になったばかりの頃は、工事写真で何を撮るかに迷うのが当たり前です。
私は工事写真を自分で撮ってきて、公共工事や補助金関連の工事の写真も経験してきました。
その立場から言える答えは案外シンプルです。
工程のはじめと終わりを撮る。
ここを押さえるだけで何を撮るかの骨組みができます。
もちろん工種や発注者によっては、施工状況・使用材料・品質・出来形(施工が終わった部分の形状や寸法など)といった施工途中に必要な写真が別にあります。
何を撮ればいいか迷う初心者は、工程のはじめと終わりを骨組みにすると整理しやすくなります。
工事写真は工程のはじめと終わりを撮る 結論から
工事写真で何を撮るかに迷ったら、まず工程のはじめと終わりを一つの基準にしてください。
工程とは工事を進める作業の段取りや順番のことです。
何を撮ればいいか迷うのはなぜ?
現場は撮れるものだらけです。
材料・機械・人の動き・周りの様子と、カメラを向ければどこでも写真になります。
基準がないと必要以上に撮って整理に困ったり、逆に必要な写真を撮り忘れたりします。
迷いの正体は撮る量ではなく、撮る基準がないことなんです。
はじめと終わりを撮ると何が残る?
はじめの写真と終わりの写真があれば、施工前から施工後までどう変わったかを比較しやすくなります。
工程ごとのはじめと終わりに必要な施工中写真を加えていけば、工事の流れを写真で追いやすくなります。
工程のはじめと終わりは絶対に撮る。
私はこれを工事写真の骨組みだと考えています。
着工前は何を撮る?
着工とは工事に取りかかることです。
着工前写真は、工事に手を付ける前の現場を残す写真のことを言います。
着工前写真は何のために撮る?
着工前写真の目的は、工事前の「初めの状態」を残すことです。
着工前は初めの状態を引きと寄りで撮ります。
私が着工前に撮ってきたのは、「この傷は工事の前からあったのか、なかったのか」を後から説明できるようにするためです。
工事が終わってから傷や汚れに気づいても、着工前の写真がなければ前後を比べる材料がありません。
傷が工事前からあったことを写真で示すなら、着工前に残した写真が重要です。
工事が始まってから撮った写真では、もう初めの状態には戻れません。
着工前はどこを撮る?
工事範囲の全体は引きで撮ります。
全体が写っていれば、どこの工事かが一目で分かります。
そのうえで既存の傷・汚れ・変形など、気になる所を寄りで押さえます。
寄りの写真は全体の中のどこなのかが分かるよう、引きの写真とセットで残すのが基本です。
工事範囲の周りにある既存の建物や設備、資材を運ぶ通路なども状態を残しておくと安心です。
工事範囲だけでなく、搬入経路や周辺設備などの状態が後から確認材料になることもあるからです。
着工前に現場を自分の足で確かめる考え方は足場の記事でも書いています

施工中は何を撮る?
施工中写真は、工事が進んでいく途中の状況を残す写真です。
何を撮るかで一番迷いやすいのがここやと思います。
施工中はいつ撮る?
私は施工中の工事写真のタイミングを工程で決めていました。
各工程のはじめと終わりは絶対に撮ります。
そのためには工程表を見て、次に何が始まって何が終わるかを先に頭に入れておくことです。
工程表とは、どの作業をいつからいつまで行うかを一覧にした予定表のことです。
始まる前に分かっていれば、カメラを持って待ち構えられます。
始まってから気づいても、はじめの写真はもう撮れません。
着工から引き渡しまで工程がどう流れるかは、足場工事の例で見ると分かりやすいです

工程の途中はどこまで撮る?
途中で何をどれだけ撮るかは、発注者・工種・契約で変わります。
発注者は工事を頼んだ側で、工種は土工やコンクリート工のように工事を種類で分けた呼び方です。
国土交通省の土木工事では、写真管理基準(案)で工事写真が着手前及び完成写真・施工状況写真などに分類され、撮影箇所一覧表で工種ごとの撮影項目や撮影頻度が示されています。
写真管理基準とは、工事写真の分類・撮影箇所・撮影頻度などを定めた基準です。
民間工事では、契約図書や発注者・元請の写真管理ルールなどを着工前に確認しておきます。
元請は発注者から直接工事を請けて現場をまとめる会社のことです。
それでも迷う場面はあります。
そんな時に私がずっと伝えてきたのがこの言葉です。
「引きと寄りを多めに撮っておいて。そうすれば後でどうにかなる」
写真が多ければ後から必要なカットを選べるという意味で、撮らなかった写真は選びようがありません。
隠れてしまう部分はどうする?
埋まる・覆われる・仕上げで見えなくなる部分は、隠れる直前までが撮影のチャンスです。
隠れる前に撮れなかった写真は後から撮り直せないので、ここだけは先回りしてください。
ただし撮影より安全が先です。
高所や重機の作業範囲・開口部付近・稼働中設備の周辺などでは、必要な安全措置を確認して撮影します。
吊荷の下には撮影のために立ち入らないでください。
完成後は何を撮る?
完成写真には何を残す?
完成写真は、出来上がりの全体を引きで、要所を寄りで撮ります。
全体でどこの何が完成したかを見せ、要所できちんと納まっているかを見せるイメージです。
着工前と同じ位置や向きから撮っておくと、前後の比較が一目で分かります。
着工前の写真を撮る時点で、完成時にどこから撮るかを意識しておくと後が楽になります。
完成写真は最後にまとめて撮ればいい?
後でまとめて撮ればいいと考えがちですが、完成直後でないと撮れない状態もあります。
片付けや次の工事が入ると、出来上がったばかりの姿は変わっていくことがあるからです。
完成したら、片付けや次の工程が入る前に撮る段取りを組んでおくと安心です。
完成も一つの工程の終わりと考えれば、撮り忘れにくくなります。
公共工事や補助金の工事は何が違う?
撮る量はどれくらい変わる?
私の経験では、公共工事や補助金関連の工事は民間工事より書類や写真がかなり多いと感じることがありました。
数えたわけではなく、あくまで私の肌感です。
どこまで撮るかは工事ごとの決まりで変わります。
民間工事の感覚のまま入ると、必要な写真が足りなくなるおそれがあります。
撮り始める前に何を確認する?
公共工事では、対象工事の仕様書や適用される写真管理基準を確認します。
仕様書とは、工事で使う材料・施工方法・品質などの条件をまとめた書類です。
補助金関連の工事では、対象制度の要領や手引き・交付元や事務局の指示を確認します。
写真の扱いも制度によって違うので、ほかの工事のやり方をそのまま当てはめないことです。
着工前に何の写真が求められているかを確認してから撮り始めてください。
分からなければ、対象工事の監督職員や発注者・制度の担当窓口など、その工事の確認先へ問い合わせます。
はじめと終わりを押さえれば迷わない まとめ
工事写真で何を撮るか迷ったときは、工程のはじめと終わりを軸にすると整理しやすくなります。
着工前は初めの状態を引きと寄りで。施工中は各工程のはじめと終わり。完成は全体と要所。
そのうえで、どこまで撮るかは工事ごとの決まりを先に確かめておきます。
それでも迷ったら引きと寄りを多めに撮っておけば、後から選べます。
工事写真は工程の始まりと終わりに打つ杭のようなものです。
始まりと終わりに杭を打ち、その間に必要な写真を残していけば、後から工事の道筋をたどりやすくなります。
本日もご安全に!

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