COLD材を使った部品を熱処理に出したときの話です。
戻ってきた部品を見て手が止まりました。
歪んでいたんです。
熱処理の前は寸法どおりに作ったはずでした。
私の実感ではその部品はホット材以上に曲がっていました。
加工などで内部に残っていた応力が熱処理で開放されて歪んだのではないかと感じました。
あとで先輩から残留応力も原因の一つとして考えられると聞いて腑に落ちました。
そういう見方もあるんかと。
材料や加工の現場はそれなりに見てきたつもりでした。
それでも熱処理で寸法が変わるという現実は発注側になって初めて実感しました。
加工前の材料寸法だけ見ていてもあかん。
熱処理の後の仕上げまで考えなあかんと学びました。
先に結論を言うておきます。
熱処理をすると寸法が変わることがあります。
だから熱処理後に仕上げる部品を仕上がり寸法ぴったりで流すと手戻りになることがあります。
加工の順番と仕上げ代をどう取るかが大事なんです。
熱処理で寸法は変わることがある|加工順と仕上げ代は一律で決まらん
もう一度はっきり書きます。
熱処理をすると寸法が変わることがあり、仕上がり寸法ぴったりで流すと手戻りになることがあります。
加工を熱処理の前後どちらでやるか。
仕上げ代をどれだけ残すか。
これは材質、形状、加工履歴、熱処理方法、加熱と冷却の条件、加工設備で変わります。
何mm残せばいいという一律の答えもありません。
だから最後は加工屋と熱処理業者に確認するのがいちばん確実です。
この記事では数字は出しません。
代わりになぜ変わるのか、どこを誰に確認すればいいのかを順に整理します。
そこが分かれば工程は落ち着きます。
なぜ熱処理で寸法が変わり歪むのか
熱処理は金属を加熱して冷やす処理です。
このとき寸法が動く理由は一つやありません。
一つは材料の中に残っていた応力です。
圧延や加工で入った応力が加熱でゆるんで変形や寸法変化につながることがあります。
もう一つは加熱と冷却のムラです。
全体が同時に伸び縮みせず時間差が出ると歪みます。
金属の組織そのものが変わることでも寸法は動きます。
組織が変わると体積も変わるからです。
加工前からあった残留応力の開放に加えて、熱処理中の温度差や組織変化でも歪みが生じることがあります。
どれか一つと決めつけられません。
複数の要因が重なって出るものなんです。
私のCOLD材の部品もその一つやったと思います。
内部に残っていた応力が熱処理で開放されて歪んだのではないかと今は考えています。
当時はそこまで分かっていませんでした。
私の実感ではそのCOLD材の部品はホット材以上に曲がりました。
ただしこれはあくまで私の一件での実感です。
COLD材が必ずHOT材より歪むという話やありません。
どれだけ歪むかは材質、形状、加工履歴、熱処理方法、加熱と冷却の条件で変わります。
歪みの原因も残留応力だけとは限りません。
先輩に教わって私もそこで初めて知りました。
そもそもCOLD材とHOT材が何なのかがあいまいなら先にここを読んでほしいです。
素材の違いが歪みの入口です。

機械加工は熱処理の前か後か
熱処理する部品でよく迷うのが加工の順番です。
熱処理の前に削るのか後に削るのかです。
部品や処理方法によっては熱処理前に荒加工し熱処理後に仕上げる工程が採られます。
熱処理で寸法が動くぶんを後の仕上げで整えるためです。
ただしこれが必ず正解というわけやありません。
材質や熱処理の方法で順番の考え方は変わります。
そこは加工屋や熱処理業者と相談する部分です。
私のあの部品は熱処理後の機械加工でした。
だから熱処理で出た歪みが仕上げの前提になっていました。
もう一つ知っておきたいことがあります。
焼入れなどで硬くなると熱処理後は削りにくくなることがあります。
硬くなった材料をどう仕上げるかは加工方法にも関わります。
ここは加工屋の領分なので細かい手順には触れません。
気になるなら加工屋に相談してください。
荒加工と仕上げ加工を分ける理由|仕上げ代を残す考え方
荒加工と仕上げ加工を分ける理由の一つがここにあります。
熱処理で動くぶんを見込んで削り残しておくためです。
仕上げ代とは最後に仕上げるために残しておく余分のことです。
現場では取り代や仕上げしろとも呼びます。
熱処理で歪んでもこの余分があれば最後に削って寸法に入れられます。
仕上がりぴったりで熱処理に流すと逃げ場がありません。
歪んだらもう直せず作り直しになることもあります。
その一手間を惜しむと結局は高くつきます。
材料をどれくらい大きく頼むかの基本はこっちにまとめました。
熱処理の仕上げ代もこの延長で考えられます。

熱処理後の仕上げ代は一律に決められない
では仕上げ代を何mm残せばいいのか。
ここも一律には決まりません。
仕上げ代は材質や形状や熱処理方法で変わるので一律には決められません。
加熱と冷却の条件や加工設備でも変わります。
公式の資料には一般的な目安が載っていることがあります。
ただしそれをそのまま自分の部品に当てはめるのは危ういです。
目安は目安として、自分の部品でどうなるかは加工屋と熱処理業者へ確認するのがいちばんです。
そこを飛ばすと目安と現実がずれます。
図面どおりの寸法が現場でそのまま通らんのはよくある話や。
寸法で泣きたくない人はこっちも読んでほしいです。

加工屋と熱処理業者へ確認する内容
確認する相手は二つに分かれます。
加工屋と熱処理業者です。
加工順と仕上げ代は加工屋と熱処理業者の両方に確認するのが確実です。
片方だけ聞いても工程はそろいません。
加工屋に聞きたいのはこのあたりです。
- 加工の順番(熱処理の前と後で何をやるか)
- どれくらい仕上げ代を残すか
- 熱処理後に削りにくくならないか
- 熱処理後に必要な寸法精度
熱処理業者に聞きたいのはこのあたりです。
- どんな熱処理方法にするか
- 歪みや寸法変化がどれくらい見込まれるか
- 仕上がりの硬さ
- 熱処理後に必要な寸法精度
どっちに何を聞くかが分かるだけで話が早くなります。
両方の答えを突き合わせて工程が決まります。
どちらかを責める話やありません。
加工の専門と熱処理の専門は見ている場所が違うだけです。
図面と材料発注で先に確認する項目
ここまでの話は図面を出す前に効いてきます。
材料を頼む前に決めておきたいことがあります。
- 熱処理をするかどうかとその方法
- 硬さの指定
- 加工の基準面
- 仕上げ代をどう見るか
- 熱処理後に仕上げ加工をするか
これを決めずに図面だけ先に出すと後で慌てます。
私がまさにその口でした。
熱処理する部品は工程まで含めて一枚の絵にしておく。
それだけで手戻りはぐっと減ります。
まとめ
熱処理をすると寸法が変わることがあります。
だから熱処理後に仕上げる部品を仕上がり寸法ぴったりで流すと手戻りになることがあります。
加工の順番と仕上げ代は一律で決まりません。
最後は加工屋と熱処理業者に確認してください。
私のCOLD材の部品はホット材以上に曲がりました。
真っ直ぐ作ったつもりでも熱処理でそうなることがあるんです。
熱処理は焼き物に似ています。
成形した器も窯で焼くと縮んだり歪んだりします。
焼く前の寸法そのままには上がりません。
だから焼き上がりを見込んで作ります。
金属の部品も同じです。
分からんまま仕上がり寸法で熱処理に流さないこと。
これが手戻りを防ぐいちばんの近道です。
本日もご安全に!

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