綺麗にビードが引けました。
そう言ってドヤ顔をする若手がいます。
でも本当の地獄はそこから始まるんです。
今日はその話をさせてください。
1. 導入:溶接が終わって「綺麗にビードが引けました」とドヤ顔をする若手
見た目が綺麗なビード。
確かに気持ちええもんです。
でも溶接の評価は見た目やない。
そこで出てくるのが赤と白のスプレーです。
カラーチェック。
正式にはPT試験。
浸透探傷試験と言います。
目に見えんピンホールやクラック。
それを暴き出す検査です。
これが溶接工の真の通信簿なんです。
自分では完璧やと思ってた。
でも白い粉の上に赤い点がポツポツ浮かぶ。
あの瞬間の血の気が引く感じ。
経験した人ならわかりますよね。
見た目は綺麗でも風や電気のせいで中に欠陥ができていることはよくあります。ブローホールを防ぐ鉄則はこっちです。

2. PT試験の基本メカニズムと、その限界
検査の仕組みは単純です。
まず前処理で表面を洗浄する。
油やスパッタや汚れを落とすんです。
ここが甘いと浸透液が弾かれて何も入りません。
そして完全に乾かす。
次に赤色の浸透液を吹き付ける。
毛細管現象でキズの奥まで染み込んでいきます。
この浸透時間が大事です。
だいたい5分から60分。
焦って早く進めたら奥まで入りません。
その後表面の余分な赤色を拭き取る。
そして最後に白色の現像液を吹く。
すると何が起きるか。
キズに潜んでた赤色が白い粉に吸い出されるんです。
じわっと血みたいに滲み出てくる。
これが指示模様です。
ただしここで絶対に勘違いしたらあかんことがあります。
PTで見つかるのは表面に開口している欠陥だけなんです。
溶接の中に閉じ込められた内部のブローホール。
あれはPTでは絶対に出ません。
赤い液がそもそも入っていけんからです。
内部の欠陥を見たいならRTやUTの仕事です。
PTは万能やない。
表面専門の検査なんです。
そこを混同したら見逃しの元になります。
この単純な作業にこそ罠があるんです。
3. 最悪のタブー「赤色を直接スプレーで洗う」
若手が一番やる最悪のミスを言います。
赤い浸透液を洗浄液スプレーで直接洗い流すことです。
現場でよく見る光景です。
ウエスで拭くのが面倒くさい。
だから洗浄液のスプレーを溶接部に直接ブシューっと吹きかける。
赤色が流れて表面が綺麗になる。
一見ちゃんと除去できたように見えるんです。
でもこれをやったらどうなるか。
キズの奥に入り込んだ赤色まで全部洗い流されるんです。
考えてみてください。
毛細管現象でやっとキズの奥に入った赤い液。
そこに溶剤を直で吹きつける。
奥の液までまとめて流れ出るに決まってます。
その後で白を吹いても何も出ません。
真っ白なままです。
そして若手は言うんです。
異常なしでしたと。
これは検査やない。
欠陥を見逃すための作業です。
溶接学会誌にもはっきり書いてあります。
除去液を試験体表面に直接塗布すると。
きずの中の浸透液も除去されるので絶対行わないこと。
絶対と書いてあるんです。
正しい手順は決まってます。
まず乾いたウエスで表面の赤色を拭き取る。
その後で洗浄液を軽く含ませたウエスで拭く。
スプレーはウエスに吹くもんです。
ワークに直接吹くもんやない。
そして強くこすりすぎるのもダメです。
力を入れると奥の液まで引っ張り出してしまう。
軽く撫でるように拭く。
この加減が検査の命なんです。
4. 「白」はペンキやない。塗りたくるな
もう一つのミスが現像液の吹きすぎです。
真っ白になるまで親の仇のように厚塗りする人がおります。
たっぷり塗った方がよく見えると思ってるんです。
でも逆なんです。
白を厚く塗りすぎるとどうなるか。
微細なキズから出てくる赤色はほんの少量です。
その少量が分厚い白の層を通り抜けられない。
途中で止まって表面まで到達できんのです。
つまり欠陥があっても白の中に埋もれて見えない。
厚塗りは欠陥を隠す作業になってるんです。
正解は薄く均一です。
缶をよく振って20cmから30cmくらい離して吹く。
うっすらと下地が透けるくらいでいい。
そして現像時間を待ちます。
だいたい10分から30分。
吹いてすぐ見て何も出てへんと判断したらあかん。
赤色が上がってくるには時間がかかるんです。
薄く均一にそして待つ。
これがプロの現像なんです。
もし欠陥が見つかったらグラインダーで削ってやり直しです。削り作業に特化した刃の使い方はこれに書きました。

5. 結論:カラーチェックは「合格するための作業」やない
カラーチェックを合格するための作業やと思ってませんか。
赤を吹いて白を吹いて何も出んかったらOK。
そういう儀式やと。
違います。
これは隠れた不具合を見つけ出すための検査です。
その先にあるのは水漏れです。
破裂です。
現場を出た後の大事故を防ぐための最後の砦なんです。
赤を直接洗い流せば何も出ません。
白を厚塗りすれば何も見えません。
その日は合格します。
書類にもハンコが押されます。
でも欠陥はそこに残ったままなんです。
数年後その配管が漏れる。
最悪圧に負けて裂ける。
その時誰の溶接やったか記録は残ってます。
自分を騙す検査に何の意味もない。
正しい手順で誤魔化さずにキズと向き合う。
出たら削ってやり直す。
その面倒くささから逃げん人間だけが本当に信頼される溶接工になれるんです。
赤い点が出るのは恥やない。
見逃すことが恥なんです。
本日もご安全に!
の罠。赤液を「直接スプレーで洗う」三流と、白を塗りたくる素人.jpg)
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