配管なんてただの鉄の筒やろ。
そう思ってませんか。
その認識のまま繋いだ配管が数年後に人を殺すことがあるんです。
今日はその話をさせてください。
1. 導入:配管なんてただの鉄の筒だと思っている素人
現場に配管が転がってます。
50Aの管が二本。
外径を測ったらどっちも60.5mm。
同じに見えますよね。
でも中身はまるで違うことがあるんです。
配管には目に見えん肉厚のランクがあります。
Schスケジュールと呼ばれるものです。
外から見ても絶対にわかりません。
径が合えばええやろ。
そう言って適当に繋ぐ人がおる。
そして本当に怖いのはその配管が破裂する時やないんです。
破裂してくれたらまだマシなんです。
一番怖いのは試験に通ってしまうことなんです。
なんでそう言い切れるか。
順番に話していきます。
圧力をかける試験で手を抜いたら大事故になります。
エアー試験が爆弾に変わる恐怖はこっちに書きました。

2. スケジュール(Sch)とは何か
まずSchの正体を押さえてください。
これは配管の厚みを表す規格です。
数字が大きくなるほど肉厚が厚くなる。
Sch40が標準。
Sch80が特厚。
さらにSch160まであります。
そして一番大事なのがここです。
同じ呼び径ならSchが変わっても外径は同じなんです。
厚くなる分は内側に食い込む。
つまり内径が狭くなるだけなんです。
実際の数字で見てください。
50Aの場合です。
外径はどれも60.5mm。
Sch40なら肉厚3.9mm。
Sch80なら肉厚5.5mm。
Sch160なら8.7mm。
外から見たら全部同じ60.5mmの管です。
100Aならもっと差が出ます。
外径114.3mm。
Sch40が6.0mm。
Sch80が8.6mm。
2.6mmも違う。
なのに外径は同じ114.3mmなんです。
これが最大の罠なんです。
そしてSchの数字にはちゃんと意味があります。
Sch番号はだいたい1000×P÷Sで決まります。
Pが設計圧力。
Sがその温度での許容応力です。
つまりSchの数字は流すものの圧力から逆算された答えなんです。
デザイナーが適当につけた番号やない。
ここでもう一つ覚えといてほしいことがあります。
SGPにはSchがないんです。
あれは肉厚が最初から一本で決まってる規格です。
50AのSGPなら3.8mm。
Sch40の3.9mmとほとんど変わりません。
でもSGPは低圧用。
STPGは圧力配管用。
規格そのものが違うんです。
そしてややこしい例外もあります。
ステンレスの250AだとSch40SもSch80Sも肉厚は同じ9.27mmです。
番号と厚みがいつも比例するわけやないんです。
STDやXSという古い呼び方も残ってますがSch番号と完全一致はしません。
だから発注はSchの数字で指定するのが確実なんです。
3. Sch40とSch80を間違える若手と商社
ここからが現場のリアルです。
図面には100A Sch80と書いてある。
高圧がかかるラインです。
でも若手が100Aとだけ見て発注する。
資材屋も図面を読めてない。
同じ100Aやからと言ってSch40を納品してくる。
現場に届いた管は外径114.3mm。
図面通りの100Aです。
パッと見何の問題もありません。
そのまま溶接したらどうなるか。
そこで初めて地獄が始まるんです。
だから溶接の前に必ず管の断面を見てください。
外径やない。
切り口の肉厚を見るんです。
100AでSch40なら6.0mm。
Sch80なら8.6mm。
ノギスを当てれば一発でわかります。
この数秒の確認をサボるだけで後に何十時間が飛ぶ。
繋いだ後に発覚したら全部切ってやり直しです。
材料の発注ミスはフランジでもよく起きます。5Kと10Kを間違えて泣かないための図面の読み方はこれです。

4. 本当の地獄は「試験に通ってしまう」ことや
ここが一番大事な話です。
Sch80の指定をSch40で組んでしまった。
そして耐圧試験をかける。
そこで破裂したら実は幸運なんです。
水圧試験なら破裂しても水が噴き出すだけです。
その場で圧が抜けて終わる。
そして原因が発覚してやり直しになる。
時間とカネは飛びますが人は死にません。
問題は通ってしまう場合なんです。
耐圧試験の圧力は常用圧力の1.5倍です。
つまり運転圧の1.5倍しかかけません。
Sch40の管がその1.5倍にギリギリ耐えてしまうことがあるんです。
圧力計は規定値まで上がる。
漏れもない。
合格です。
ハンコが押される。
そしてそのまま運転に入る。
でもその配管には余裕がないんです。
Schの計算には腐食代も入ってます。
何年か使って肉厚が減ってももつように計算されてる。
その余裕がSch40には残ってないんです。
薄いまま毎日圧がかかる。
中を流れるもので内面が少しずつ削れていく。
そして三年後五年後。
中身が熱い油や蒸気の状態で裂ける。
試験の日は水でした。
でもその日中に入ってるのは製品なんです。
破裂してくれてたら誰も死ななかった。
通ってしまったから人が死ぬんです。
Schの見落としが怖いのはこれなんです。
5. 肉厚が違う配管を溶接する時の「段差」の罠
設計上Sch40とSch80を繋ぐ指示が出ることもあります。
圧力の違うゾーンの境目です。
この時そのまま突き合わせたらどうなるか。
外径は同じ。
でも内径が違います。
100Aなら内径がSch40で102.3mm。
Sch80で97.1mm。
つまり内面に片側2.6mmの段差ができるんです。
この段差を放置してそのまま流したらどうなるか。
流れが段差にぶつかって乱流が起きます。
その渦が配管の内面を削っていくんです。
しかも段差は応力が集中する場所でもある。
そこが弱点になって割れの起点になります。
だから規格でもちゃんと決まってます。
JIS B 8265ではこうなってます。
端面の食い違いが薄い方の呼び厚さの1/4または3.5mmのいずれか小さい方を超える場合。
その時はテーパを設けなあかんのです。
そしてテーパの長さは片面側における厚さの差の3倍以上。
つまり2.6mmの差なら8mm近いテーパをつけて削るんです。
なだらかにという感覚の話やないんです。
数字で決まってる。
厚い方を削ってテーパを作る場合は削った後の厚みが計算厚さ以上であることも条件です。
削りすぎたら本末転倒なんです。
この一手間をかけてから溶接する。
それがプロの仕事なんです。
6. 結論:たかが鉄の筒やない
配管の厚みはそのまま耐えられる圧力の限界です。
Schの数字は設計者が圧力から逆算した答えなんです。
その数字を見落とす人間は現場監督失格です。
図面を見る時径だけ見たらあかん。
その横のSchの数字が命綱なんです。
そして材料が届いたら断面を見る。
ノギスを当てる。
数秒です。
その数秒を惜しんだ人間が数年後の事故を作るんです。
流れるものの圧力を想像してください。
温度を想像してください。
そのラインに何が流れて何度で何MPaかかるのか。
それを頭に置いて正しい厚みの材料を確実に手配する。
配管はただの鉄の筒やない。
中身を押さえ込むための計算された壁なんです。
その壁を数字で守れる人間になってください。
本日もご安全に!
」を舐めるな。Sch40とSch80を間違えて耐圧試験で破裂する絶望.jpg)
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