管をセットしてスイッチを押すだけ。
ねじ切り機をそう思ってませんか。
その感覚で切ったネジは必ず漏れます。
今日はその話をさせてください。
1. 導入:ねじ切りは「機械と鉄の対話」や
ねじ切り機。
現場ではパイプマシンと呼びますね。
管をチャックに咥えさせる。
レバーを引く。
スイッチを押す。
ウィーンと回ってネジが出来上がる。
若手はこれを見てこう思うんです。
全自動やんと。
誰がやっても同じやろと。
違います。
同じ機械で同じ管を切っても人によって仕上がりが全く違うんです。
漏れるネジ。
漏れないネジ。
その差は機械やない。
使う人間の手にあるんです。
ねじ切りは機械と鉄の対話なんです。
その対話ができんまま切った人は二つのうちどっちかをやらかします。
水を漏らすか。
機械を壊すか。
その両方かもしれません。
2. 漏れない理由「テーパー(先細り)」の概念
まず一番大事な理屈からいきます。
ボルトのネジを思い浮かべてください。
真っ直ぐですよね。
軸に対してどこも同じ太さ。
平行です。
でも配管に切るネジは違うんです。
管用テーパねじと言います。
JISで言うとB0203。
記号はRとかRcで書かれてるやつです。
これが何かというと先細りなんです。
先端が細くて奥に行くほど太くなる。
円錐みたいな形なんです。
テーパの比率は16分の1と決まってます。
じゃあなんでわざわざ先細りにするのか。
ここが本質です。
ねじ込んでいくと金属同士がクサビみたいに食い込むからなんです。
ネジを回していきますよね。
最初はスカスカです。
でも奥に入るほど径が太くなっていく。
するとめねじ側とぎゅうぎゅうに干渉し始める。
金属と金属が互いに変形しながら密着する。
そこで水も空気も止まるんです。
つまりテーパねじは形そのものがシールなんです。
だからJISにもはっきり書いてあります。
ねじ部の耐密性を主目的とするねじと。
この理屈がわかってへんとどうなるか。
浅すぎるネジを切る。
奥まで食い込まんから締め込んでも止まらん。
逆に深すぎるネジを切る。
締めてもスカスカで継手が最後まで入りすぎる。
どっちも漏れます。
ちなみに配管のネジが全部テーパやと思ったらあかんです。
管用平行ねじというのもあります。
Gで表すやつですね。
あれはネジで止めてません。
ガスケットで止める構造です。
ネジの形で止めるのか。
パッキンで止めるのか。
そこが根本から違うんです。
ねじ切りをする前に配管自体の肉厚(スケジュール)を確認してください。
薄い配管にネジを切ると強度が落ちて破裂します。
」を舐めるな。Sch40とSch80を間違えて耐圧試験で破裂する絶望-169x300.jpg)
そしてもう一つ。
ねじを切るというのは管を削って薄くすることなんです。
谷の分だけ肉厚が減る。
つまりそこが一番弱い場所になります。
ちなみに削らずにローラーで押し出す転造ねじなら切削ねじの約1.5倍の強度が出ます。
薄い管にネジを切ったらどうなるか。
もう答えは見えてますよね。
3. ダイヘッドの合わせ方と「食い付き」
ねじ切り機の命がダイヘッドです。
刃をセットする部分ですね。
そしてその中に入ってるのがチェーザ。
これが実際に鉄を削る刃です。
チェーザは4個1セットになってます。
ここで基本中の基本があります。
管のサイズに合わせてメモリを正確に合わせる。
これだけです。
でもこれを目分量でやる人がおるんです。
だいたいこの辺やろと。
メモリがズレたら切れるネジの径がズレます。
径がズレたらテーパの当たりが変わる。
そして漏れます。
たった数秒の確認をサボってその配管全部がやり直しになるんです。
そしてチェーザには番号が振ってあります。
所定の位置に所定の番号を入れる。
これを入れ違えたらネジ山がまともに切れません。
もう一つ大事なことがあります。
チェーザは鉄管用とステンレス管用で別物なんです。
ステンは硬い。
そして粘る。
鉄用のチェーザでステンを切ろうとしたら一発で刃が終わります。
材質に合わせて交換する。
そこは絶対に手を抜かんでください。
そして次が食い付きです。
レバーを引いてチェーザを回ってる管に当てる。
この最初の一瞬が全てを決めます。
ここでガツンといったらあかんのです。
力任せに刃をぶつける。
その瞬間刃が欠けます。
正解は優しく当てて確実に食い込ませることです。
刃が鉄を掴んだ感触が手に返ってきます。
その手応えを感じたらあとは軽く送る。
無理に押し込む必要はありません。
食い付いたら機械が勝手に引き込んでくれるんです。
4. 無理切りでチェーザ(刃)を割る恐怖
チェーザは消耗品です。
でも安くありません。
そして現場でこれを一番殺してる原因は実は無理切りやないんです。
切削油です。
ねじ切り機には必ず切削油がかかってますよね。
あれをただの潤滑やと思ってませんか。
違います。
あれはチェーザの命綱なんです。
刃が鉄を削る時そこには猛烈な熱が発生します。
切削油はその熱を奪って刃を冷やしてる。
同時に削りカスを流してるんです。
油が切れたらどうなるか。
刃が焼けます。
一瞬で切れ味が死ぬ。
そして油は劣化もするんです。
白濁してくる。
黒ずんでくる。
そうなったら交換時期です。
でも面倒くさいからそのまま使い続ける人がおる。
すると精度が落ちてチェーザの消耗が一気に早まる。
しかも切削油にも鉄用とステン用があります。
管に合ったものを使わなあかんのです。
その上で無理をしたらどうなるか。
送りハンドルを力任せにゴリゴリ押す。
早く終わらせたいから無理なスピードで送る。
その瞬間です。
バキッという嫌な音がします。
チェーザが割れたんです。
そして割れた破片はその場に落ちてくれません。
回転してるんです。
飛びます。
顔の高さに来ることもある。
だから保護メガネはここでも必須なんです。
そして高価な刃が一瞬でゴミになる。
ここでもう一つ絶対に言うときます。
ねじ切り機は管を回す機械です。
その回転する管に手袋の先が触れたらどうなるか。
一瞬で巻き込まれます。
引き込まれた手は止まりません。
指ではすまん話になります。
メーカーが巻き込み防止用ブレーキ付きモーターを載せてるのはそれだけ事故が起きてるからなんです。
回ってる管に手を近づけるな。
袖もタオルも垂らすな。
これだけは絶対に守ってください。
5. 結論:ねじ切り機は全自動の魔法の箱やない
ねじ切り機は魔法の箱やありません。
スイッチを押したら勝手にできる。
その認識のままやといつまでも漏れます。
覚えることはそんなに多くないんです。
テーパの理屈を理解する。
なんで先細りにするのか。
どこで水が止まってるのか。
そしてメモリを正確に合わせる。
チェーザを材質で選ぶ。
切削油を切らさない。
劣化したら替える。
食い付きは優しく確実に。
これだけです。
その上で指先を澄ませてください。
刃が鉄を削る音。
送りハンドルに返ってくる振動。
機械はちゃんと喋ってるんです。
いい音がしてる時は綺麗な山が出来てます。
嫌な音がしたら必ずどこかがおかしい。
その声を聞ける人だけが美しいネジ山を切れる。
そして美しいネジ山を切れる人だけが水漏れゼロの配管を組めるんです。
本日もご安全に!
を割る三流のやらかし.jpg)
コメント