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SUSなら錆びないは素人の幻想。SUS304と316(L)の使い分けと塩素の恐怖

ステンレスだから錆びませんよ。
若手がそう言って笑ってます。

そのセリフを水処理プラントで吐いたらその現場は終わりです。
今日はその話をさせてください。

目次

1. 導入:「ステンレスだから錆びませんよ」と笑う若手

ステンレスは錆びない。
そう思ってませんか。

違います。
ステンレスは錆びにくいだけなんです。

なんで錆びにくいか。
表面に不動態皮膜という膜が出来てるからです。

クロムが酸素とくっついて作る目に見えん薄い膜。
これが鉄を守ってくれてる。

でもこの膜は絶対やありません。
破られる条件が揃えばあっさり負けます。

そして一度破られたら中身はただの鉄です。
錆びます。

それも普通の鉄より厄介な錆び方をする。
海沿いの現場。
浄水場。

そういう場所で錆びないと言い切ったら数年後に穴が空きます。
鉄の粉が飛んだだけでSUSは一発で錆びます。もらいサビの恐ろしさはこっちに書きました。

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2. 基準となる「SUS304」と塩素の罠

世の中のステンレスのほとんどはSUS304です。
現場でSUSと言うたらたいていこれを指してます。

クロムとニッケルが入ってて基本的には優秀な材料です。
錆びにくい。
加工しやすい。
値段もこなれてる。

だから一番使われてるんです。
でも304には決定的な弱点があります。

塩分と塩素です。
これに触れると304は絶望的に弱いんです。

なんでか。
塩化物イオンが不動態皮膜を局所的に破るからです。

面でジワジワ錆びるんやない。
一点だけ集中して食い破る。

これが孔食です。
想像してください。

表面はピカピカのままなんです。
見た目は綺麗です。
どこも錆びてない。

でも一点だけ針で刺したような穴が空いてる。
しかもその穴は下に向かって深く進む。

気づいた時には板を貫通してるんです。
浄水場を思い浮かべてください。

次亜塩素酸で消毒しますよね。
あれが304にとっては毒なんです。

海沿いも同じです。
潮風には塩化物が乗ってます。

その塩分が付着したまま乾く。
濃縮されて皮膜を破る。

304は塩素環境で使ったらあかん。
これだけは頭に叩き込んでください。

3. 海と薬品の救世主「SUS316と316L」

じゃあ塩素がある現場ではどうするか。
SUS316を指定します。

316には304にないものが入ってます。
モリブデンです。
だいたい2%から3%。

これが効くんです。
モリブデンには破られた不動態皮膜を作り直す力があります。

その部分のクロム量を高めて膜を再生してくれる。
だから孔食にもすきま腐食にも強い。

耐食性が段違いに上がるんです。
値段は304の1.2倍から1.5倍くらい。

でも数年で穴が空いて交換するよりはるかに安いんです。
ただしここで正直に言うときます。

316も万能やないんです。
海水に直接触れるような環境。

そこでは316でも孔食が出ます。
そういう場所はもう316の守備範囲やない。

二相系のSUS329J3Lやニッケル合金の領域です。
316を指定したから安心。

そう思ってたら数年後に責任を取ることになります。
そしてもう一つ。

溶接するなら316Lです。
Lはローカーボンの略。
炭素を減らしてあるやつです。

なんで炭素を減らすか。
オーステナイト系のステンレスはだいたい500℃から800℃あたりの温度帯に入るとまずいことが起きます。

炭素とクロムがくっついてクロム炭化物が結晶粒界に出てくるんです。
そうなるとその周りのクロムが奪われる。

クロムが足りん領域が出来る。
そこだけ耐食性が落ちるんです。

これが鋭敏化。
そして起きるのが粒界腐食です。

問題は溶接の熱影響部です。
HAZは必ずこの温度帯を通ります。

つまり溶接したらビードの周りが鋭敏化するんです。
材料は316なのに溶接した横から錆びる。

これほど間抜けな話はありません。
316Lなら炭素が0.03%以下に抑えてある。

だからクロムと反応する炭素そのものが少ない。
炭化物がほとんど出来ないんです。

現場で溶接後に固溶化熱処理なんて出来ませんよね。
だから最初からL材を選ぶ。

それがプロの手なんです。

4. 磁石にくっつく安物「SUS430」の引っかけ

もう一つ知っといてほしいのがSUS430です。
これはニッケルが入ってません。

クロムだけのフェライト系です。
だから安い。
そして磁石にくっつきます。

厨房機器なんかによく使われてます。
でも304と比べたら圧倒的に錆びやすいんです。

資材屋が言うてくることがあります。
安いSUSありますよと。

SUSはSUSやろ。
そう思って受け取ったら430やった。

数ヶ月で赤錆が出てやり直しです。
だから磁石を当てて見抜け。

そう教える先輩がおります。
これは半分正しくて半分危ないんです。

ここは正直に言うときます。
確かに304や316はオーステナイト系やから焼きなまし状態では磁石にくっつきません。

430はフェライト系やからくっつく。
でも罠があるんです。

304は加工したら磁性を帯びます。
曲げる。
絞る。
削る。

こういう冷間加工をすると加工誘起マルテンサイトというものが出来る。
そうなると304でも磁石がくっつくんです。

つまり磁石がくっついた。
だから430や。

この判断は間違えることがあるんです。
そしてもっと大事なことがあります。

磁石では304と316の区別が一切つきません。
どっちもオーステナイト系。
どっちも非磁性です。

塩素環境で本当に必要なのは304か316かの判別ですよね。
そこには磁石が全く役に立たんのです。

じゃあどうするか。
一番確実なのはミルシートです。

材質証明書を出させる。
現場でどうしても見分けたいならモリブデンを検出する判別液があります。

そこまでやるなら蛍光X線の分析器もある。
磁石はあくまで一次スクリーニングです。

それで全部わかった気になったらあかんのです。
SUSは錆びにくさの代償として「熱で膨張して固着する」という最悪の癖があります。ボルトをねじ切らないための鉄則はこれです。

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5. 結論:図面に「SUS」としか書いてなかったら設計を疑え

図面を開いて材質欄を見てください。
そこにSUSとだけ書いてある。

番号がない。
その図面は疑ってください。

SUSという材料は存在せんのです。
304なのか。
316なのか。
316Lなのか。
430なのか。

全部別の材料です。
そして選ぶ基準は決まってます。

中に何が流れるのか。
塩素は入ってるか。
外はどんな環境か。
海は近いか。

溶接するのか。
溶接後に熱処理は出来るのか。

これを一つずつ潰していけば答えは自然に出ます。
塩素も塩害もない室内なら304で十分です。

塩素があるなら316。
そこを溶接するなら316L。

海水に直接触れるなら316でも足りません。
材料をケチった失敗は後から効いてきます。

しかも取替え工事になったら材料の差額の何十倍もかかるんです。
足場を組んで既設を切ってまた作り直す。

その時にはもう誰も304で十分やったとは言いません。
304か316か。

それを自分で指定できる人間だけが後戻りのない現場を作れるんです。
本日もご安全に!

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この記事を書いた人

手取り9万整備士から、残業120時間超え現場監督まで走ってきた。
そこで一度心が折れて無職に。
底から再出発!机上の空論は書きません。
本日もご安全に。

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