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LB系は粘る。アークを切らずに配管も手すりも溶接できた低水素系の魅力を元溶接工が語る

配管の周りをぐるりと。
手すりの角をひと息に。

アークをいったん止めて付け直すことなく私はよく一筆書きのように溶接していました。
その時に握っていたのが低水素系。現場で言うLB系の棒です。

棒が粘ってくれる。
その一言が今でも体に残っています。

目次

低水素系(LB系)は粘る。アークを切らずに回せるから配管も手すりも一筆書きのように溶接できた

先に言い切ります。
低水素系の棒には独特の粘りがありました。

溶融池が急にダレたり途切れたりせず私の手についてきてくれる感覚です。
棒が粘ってくれるから配管も手すりもアークを切らずに一筆書きで溶接できました。

上手いこと言う自信はありません。
でもこの粘りという手ごたえだけは今も指が覚えています。

LB系の「粘り」とは何か

ここからは私の運棒の感覚の話です。
理屈は後で裏取りした分を足しますが、まずは体で覚えた手ごたえから。

アークを切らずに連続で回せる気持ちよさ

溶接は一度アークを切ると付け直しが要ります。
その付け直しがない一本のラインで溶けていく時の気持ちよさは格別でした。

止まらずに進めるとビードのリズムも乱れません。
息を止めて長い一画を書くような集中がそのまま溶接になる。

この連続して運べる感覚が私は好きでした。

配管や手すりを切らずにイケた

配管の周りや手すりの回り込みは姿勢がころころ変わります。
それでもアークを止めずにぐるりと回していけた記憶が強く残っています。

念のため言葉の意味を揃えておきます。
ここで言う「切る」は母材を切ることやなくてアークをいったん止めることです。

母材を切断する話とは全くの別物です。
アークを切らずに連続で溶接できた。

それがこの棒の一番の思い出です。

銘柄までは覚えていない。でも粘りは体が覚えている

正直に書きます。
使っていたのがLB-52だったのか別の型番だったのか私はもう覚えていません。

だから銘柄は断定せずLB系・低水素系という言い方で通します。
銘柄の名前は忘れても棒が粘ってくれた運棒の感覚だけは体に残っています。

記憶で型番を言い切るより体で覚えたことを正直に書くほうが役に立つはずです。
低水素系が系統全体のどこに座るかは整理した記事があります。

溶接棒に系統があるという話は別にまとめています。
どの棒がどの立ち位置かはそちらが早いです。

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なぜ低水素系は強度部位を任されるのか

粘りの心地よさだけで選ばれる棒やありません。
低水素系が重要な所を任されるのにはちゃんとした理屈があります。

水素を抑えて割れを防ぐという理屈

低水素系はフラックスに有機物を含みません。
代わりに石灰(炭酸カルシウム)などを多く配合しアーク熱で出るガスで溶融池を守ります。

この作りのおかげで溶着金属に入る水素をぐっと低く抑えられます。
水素は溶接部が冷えてから出る低温割れの引き金になると言われます。

つまり水素を減らせる棒は割れに強い。
名前の「低水素」はそのまま強みを表しているわけです。

厚板・重要な継手で主役になる

割れに強いという性格はそのまま用途に直結します。
低水素系は厚板や高強度鋼や拘束の大きい継手といった強度部位で主役を任されます。

橋梁や建築構造物や圧力容器のような信頼性が要る場面で選ばれる棒です。
任される場所が違うからこそ扱いにも相応の腕が求められます。

なお正確な規格や適合材はメーカーや施工要領で決まっています。
細かい適合は必ずメーカーカタログや溶接施工要領で確認してください。

粘る棒にも弱点はある

ここまで粘りを褒めてきましたが良いことばかりやありません。
むしろ粘りのありがたさは弱点の裏返しでもあります。

アークを切って付け直す所が弱点

低水素系はアークスタートや継ぎ目でブローホールが出やすいと言われる棒です。
アークを切って付け直す継ぎ目こそこの棒の一番の弱点になります。

だからこそ切らずに連続で運べる粘りがありがたかったんです。
止まらず進めるほど弱点になる継ぎ目そのものを減らせるからです。

継ぎ目の処理には正しいやり方があります。
ただここでは具体的な手順や数値は一切書きません。

継ぎ目やアークスタートの処理は施工要領と有資格者のやり方に従ってください。

低水素系は湿気に弱い

もう一つの弱点が湿気です。
低水素系は被覆が湿気を吸うと途端に扱いづらくなり欠陥の種になります。

この欠陥がどれだけ厄介か。
先に知っておいて損はないです。

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乾燥管理はメーカー指定に従え

だから低水素系は乾燥管理が欠かせません。
ただし何度で何時間という数値はここには書きません。

棒ごと銘柄ごとにメーカーが正しい条件を決めているからです。
乾燥や再乾燥はメーカー指定と施工要領に必ず従ってください。

自己流の乾燥は品質も安全も崩します。

粘りを味方にするという意味と、正式な入口

低水素系の粘りは器用さやなくて信頼で応えてくれる粘りでした。
糸を切らさず布を縫うように母材と母材を繋いでいく感覚です。

ただしその一針を仕事にするには順番があります。
腕や粘りの前にくぐらなあかん入口があるんです。

棒の粘りを味わう前にくぐる入口があります。
自分と周りを守る順番の話です。

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いい棒は腕を助けてくれますが腕の代わりにはなりません。
糸がどれだけ良くても縫うのは人です。まずは正しい入口から針を持ってください。

本日もご安全に!

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この記事を書いた人

手取り9万整備士から、残業120時間超え現場監督まで走ってきた。
そこで一度心が折れて無職に。
底から再出発!机上の空論は書きません。
本日もご安全に。

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