オイルタンクが空っぽや。
でもスプレー吹きながら切ったらいけるやろ。
そう言ってレバーを引く若手を見たことがあります。
今日はその話をさせてください。
1. 導入:油をケチるという最悪の判断
ねじ切り機のオイルタンク。
下から油を吸い上げてチェーザにドバドバかけてますよね。
あれを見てこう思ってませんか。
ただの潤滑やろ。
滑ればええんやろと。
だから平気でこういうことをやるんです。
タンクが空でも潤滑スプレーを吹きながら強行する。
安い油をどこかから調達してきてコスト削減やと胸を張る。
はっきり言います。
それは数万円のチェーザと現場の時間をまとめてドブに捨ててるのと同じなんです。
しかもタチが悪いのがその場では気づかんことです。
一応ネジは切れるんです。
形にはなる。
でも中身がボロボロ。
そして試験で漏れる。
その時にはもう原因が油やったとは誰も思わんのです。
油以前にねじ切りの「テーパー」の理屈を分かっていないと話になりません。
刃を割る三流のやらかしはこっちです。
を割る三流のやらかし-200x300.jpg)
2. 切削油の本当の仕事「冷却」と「潤滑」
切削油の仕事は二つあります。
一つ目が冷却です。
チェーザが鉄を削る瞬間を想像してください。
刃先で金属が引きちぎられてるんです。
そこには凄まじい摩擦熱が発生します。
その熱を放っといたらどうなるか。
刃先が焼けます。
焼き戻しがかかって硬さが落ちる。
切れ味が一発で死ぬんです。
切削油はその熱を奪ってるんです。
二つ目が潤滑です。
でもこれはただ滑らせるという話やないんです。
削りカスを見てください。
あれは高温です。
その熱を持ったカスが刃先にくっつくんです。
溶着です。
一度こびりついたらそこがコブになる。
そのコブが鉄を削るんやなくて引きちぎり始めるんです。
切削油の油膜はこの溶着を防いでるんです。
刃とカスの間に薄い膜を作って邪魔をする。
冷やす。
くっつけさせない。
この二つが揃って初めて綺麗なネジ山が切れるんです。
スプレーで代用できるわけがないのはこれでわかりますよね。
量が全然足りません。
熱を奪えるほどの油がそこにないんです。
しかも削りカスを流すこともできん。
タンクから循環させる意味はそこにあるんです。
3. 適当な油でネジ山が「むしれる」恐怖
じゃあ油をケチったら実際に何が起きるか。
むしれです。
刃にこびりついたカスがネジ山を削るんやなくて引きちぎる。
出来上がったネジ山を見てください。
正常なネジ山は光ってます。
削り面が滑らかで山の頂が揃ってる。
でもむしれたネジ山はガサガサです。
ギザギザで白っぽい。
指で触ったらザラザラする。
このネジがどうなるか。
テーパねじは金属同士が食い込んで水を止めてるんです。
その面がギザギザやったらどうやって密着しますか。
無理ですよね。
隙間だらけの面と面をいくら締めても水は止まらん。
そしてここが一番あかんところです。
シールテープを巻いたら止まるやろ。
そう思う人がおるんです。
止まりません。
むしれたネジに何を巻いても100%漏れます。
シールテープは微細な隙間を埋めるためのものです。
ギザギザの谷を埋める充填材やないんです。
一時的に止まったように見えても圧をかけたら抜けます。
そして最悪なのがこの漏れが天井裏や壁の中で起きた時です。
内装を壊して探して切り直してまた組む。
数百円の油をケチって数十万が飛ぶんです。
4. 「上水用」と「一般配管用」と「ステンレス用」
ここからが本題です。
切削油を油性か水溶性かで選ぼうとしてませんか。
ねじ切りの世界はその分け方やないんです。
メーカーがはっきり言うてます。
ねじ切りオイルは上水用と一般配管用とステンレス用に分けられると。
これが実務の区分です。
まず上水用。
これは水道の配管に使うやつです。
日本水道協会の規格JWWA K-137に適合したものを使います。
なんで専用が要るのか。
飲み水が通る管やからです。
ねじを切った後管の中には油が残ってますよね。
それを洗い流さなあかん。
洗管という作業です。
上水用の油はこの洗管性能が高いように作られてる。
だから少ない水で短時間で流し切れるんです。
一般配管用の油を水道管に使ったらどうなるか。
洗管が終わりません。
いつまでも油が抜けない。
そして水質検査で引っかかる。
これは好みの問題やない。
規格の問題なんです。
そしてここで一番多い勘違いを潰しときます。
レッキスの上水用オイルは50W-Rという型番です。
Wが付いてますよね。
だからみんな水溶性やと思うんです。
違います。
50W-Rは不水溶性です。
水で薄めて使うオイルやないんです。
メーカーがFAQでわざわざ否定してるくらい間違えられてます。
じゃあなんで水溶性と呼ばれるか。
洗管性能に優れてるからです。
水でよく流れるから水溶性と誤解されてるだけなんです。
これを間違えて水で薄めたら終わりです。
次に一般配管用。
これは水道以外の普通の配管に使います。
そしてステンレス用。
ステンは硬くて粘ります。
削りカスが刃にくっつきやすい。
だからステン用は潤滑性が極めて高く作られてます。
鉄用の油でステンを切ったらどうなるか。
一発で溶着してチェーザが死にます。
ちなみに最近は塩素フリーが主流です。
昔は塩素系の極圧剤が入ってました。
でも環境と洗管の問題で塩素を使わんものに移ってきてるんです。
5. 結論:切削油は消耗品やない。「保険」や
最後に油の管理の話をします。
タンクの中の油は汚れていきます。
削りカスが混ざる。
水が入る。
そうなったらどうなるか。
メーカーがはっきり書いてます。
水や金属粉が混入しているとチェーザの寿命は著しく短くなると。
そして交換の見極めも決まってます。
白濁してくる。
黒ずんでくる。
そうなったらそれが交換時期です。
でも面倒くさいからと真っ黒な油を使い続ける人がおる。
そのたびにチェーザが早く死んでいくんです。
切削油は消耗品やないんです。
綺麗なネジ山を作り出すための道具です。
そして水漏れという最悪のトラブルを防ぐための保険なんです。
数千円の油を惜しんで数万円の刃を殺す。
そして数十万の手直しを呼ぶ。
計算するまでもないですよね。
タンクの油を定期的に見る。
汚れたら替える。
管の種類に合った油を入れる。
そして切る時はドバドバかける。
ケチるな。
その環境を維持することがプロの仕事なんです。
本日もご安全に!
を全滅させる現場のリアル.jpg)
コメント