「朝、目が覚めても体が布団に張り付いて動かない」 「何もないのに、急に動悸がして息苦しくなる」 「夜、クタクタなのに眠れない」
もし今、あなたがこんな症状に悩んでいるなら。 そして、「自分はなんて気合が足りないダメ人間なんだ」と自分を責めているなら。
今すぐ、その自分責めをやめてください。 あなたは怠けているのではありません。「自律神経」という体のOSが、バグを起こしているだけです。
私(竹久夢藤)も、適応障害で倒れた時、まったく同じ状態でした。 「気合だ!」「根性だ!」と叫んで無理やり体を動かそうとしましたが、最後には指一本動かせなくなりました。
今回は、どん底で私が学んだ「自律神経の正体」と、薬に頼る前に試してほしい「壊れたブレーキとアクセルの直し方」について、専門用語を使わずに解説します。
自律神経とは?「アクセル」と「ブレーキ」の話
まず、敵を知りましょう。 自律神経とは、あなたの意思とは関係なく、心臓を動かしたり、汗をかいたり、胃腸を動かしたりしてくれる「生命維持装置」のことです。
これには2つの種類があります。
- 交感神経(アクセル): 闘うモード。仕事中、緊張している時、ストレスを感じている時に活発になる。
- 副交感神経(ブレーキ): 休むモード。寝ている時、リラックスしている時、ご飯を食べている時に活発になる。
健康な人は、この2つが自動で切り替わります。 昼間はアクセル全開でバリバリ働き、夜はブレーキを踏んでぐっすり眠る。
しかし、私たちのような「頑張り屋さん」や「強いストレスに晒された人」は、どうなるか。 アクセル(交感神経)が踏みっぱなしで、錆びついて戻らなくなるのです。
これが「自律神経の乱れ」の正体です。 24時間、全力疾走している状態。だから、寝ても疲れが取れないし、急にパニックになるし、胃腸もおかしくなる。 気合が足りないどころか、気合を入れすぎた結果の故障なのです。
私が実践した、今日からできる「自律神経」リセット術
では、どうすれば錆びついたアクセルを戻し、ブレーキを効かせることができるのか。 適応障害のどん底期、私が実際にやってみて「これは効いた」と実感した方法を4つ紹介します。
難しいことは一つもありません。ベッドの上でできることもあります。
1. 朝イチの「日光浴」で強制再起動する
「そんなこと?」と思うかもしれませんが、これが最強です。
自律神経を整える物質「セロトニン」は、朝の太陽の光を浴びることで作られます。 私が動けなかった時、まずは「這ってでもカーテンを開ける」ことだけを目標にしました。
窓を開けなくてもいい。ベランダに出なくてもいい。 ただ、カーテンを開けて、光を浴びながらボーッとする。 これだけで、狂っていた体内時計が「カチッ」とリセットされ、夜に眠くなるスイッチ(メラトニン)の予約が入ります。
2. 「4-7-8呼吸法」で強制ブレーキを踏む
パニックになりそうな時や、不安で眠れない時に、私が必ずやる呼吸法です。 呼吸は、人間が唯一、意識的に自律神経に介入できる手段です。
やり方は簡単。
- 4秒かけて、鼻から息を吸う。
- 7秒間、息を止める。
- 8秒かけて、口から「フーッ」と細く長く息を吐き切る。
これを3〜4セット繰り返してください。 特に「長く吐く」時に、副交感神経(ブレーキ)が強く働きます。 嘘みたいに心臓のドキドキが治まり、手足が温かくなってくるはずです。
3. 首の後ろを「蒸しタオル」で温める
自律神経の司令塔は、脳と首の付け根あたりに集中しています。 ここが冷えて固まっていると、脳への血流が悪くなり、自律神経がパニックを起こします。
私は、レンジでチンした蒸しタオルや、市販のホットアイマスクを**「首の後ろ」**に乗せていました。 じんわり温まると、脳の緊張が物理的に溶けていく感覚があります。 「ああ、俺は今、休んでいいんだ」と体が理解してくれる瞬間です。
4. 夜のスマホは「ブルーライトカット」か「手放す」
これは現代人にとって一番難しいかもしれませんが、効果は絶大です。 スマホのブルーライトは、脳に「今は昼だ!働け!」と誤解させ、アクセルをベタ踏みにさせます。
私は適応障害のリハビリ中、「21時以降はスマホを脱衣所に置く」というルールを作りました。 どうしても触りたい時は、画面設定を一番暗くし、「Night Shift(黄色っぽい画面)」モードにする。 これだけで、睡眠の質が劇的に変わりました。
「治そう」と焦るのが、一番の毒
最後に、元・適応障害患者として一番伝えたいことがあります。
自律神経の乱れは、骨折と同じです。 「明日までに治そう」と思って治るものではありません。 むしろ、「早く治さなきゃ」と焦ることがストレスになり、余計にアクセルを踏んでしまいます。
「今は、ポンコツな自分でいいや」 「今日は一日中、何もしなかった。最高の静養ができたな」
そうやって、現状の自分に「OK」を出してあげること。 これこそが、最強の副交感神経スイッチです。
まとめ:あなたの体は、あなたを守ろうとしている
「体が動かない」「やる気が出ない」。 それは、あなたの体が発している「これ以上進んだら死ぬぞ!」というSOSであり、強制停止ブレーキです。
あなたの体は、あなたを困らせようとしているのではありません。 あなたを守ろうとして、必死に止めてくれているのです。
だから、自分の体を責めないでください。 「今まで無理させてごめんな」と声をかけて、今日はゆっくりお風呂に入ってください。
キャリアもお金も大事ですが、それができるのは、整った自律神経があってこそ。 焦らず、ゆっくり。 上を向いて深呼吸することから始めましょう。

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