「辞めたいなんて言ったら、班長に何て言われるか……」 「『根性なし』と罵られるのが怖い」
日々、国防の任務お疲れ様です。 規律、訓練、集団生活。その過酷さは、私の現場職人時代とはまた違う重圧があることでしょう。
自衛隊を辞める時、最大の壁となるのが「強烈な引き止め」です。 人手不足の今、組織はあの手この手であなたを残留させようとします。
ここで大事なのは、バカ正直に「辛いから辞めたい」と言わないことです。 そんなことを言えば、「気合が足りないだけだ」「配置転換してやるから頑張れ」と、無限ループに引きずり込まれます。

今回は、元社長の視点から、組織が反論できない「最強の依願退職理由(建前)」と、その伝え方を伝授します。 国を守る前に、まずは自分の人生を守ってください。
自衛隊における「依願退職」の難しさ
自衛隊において「依願退職」とは、任期満了ではなく、任期の途中で辞めることを指します。 民間企業なら退職届を出せば2週間〜1ヶ月で辞められますが、自衛隊はそうはいきません。
- 承認プロセスが長い: 小隊長→中隊長→大隊長…とハンコリレーが続く。
- 「身上把握」という名の説得: 面談が何度も行われる。
この長いプロセスを走り抜けるには、「ブレない理由」が必要です。
戦略1:引き止め不可能の「不可抗力」を使う
上官が一番反論しにくいのは、個人の努力ではどうにもならない「家庭の事情」です。
例文1:親の介護・家業の手伝い
「実家の父が体調を崩し、長男である私が家業(または介護)を支えなければならなくなりました。家族会議の結果、私が戻るしかありません」
【ポイント】 「家族会議で決定した」「自分がやるしかない」と強調すること。 自衛隊は「家族」というワードに弱いです。「親の面倒を見る」という大義名分があれば、上官も「親を見捨てて国を守れ」とは言いづらくなります。 ※もちろん、バレるような明らかな嘘はNGですが、事情を「盛る」のは戦略です。
戦略2:前向きな「別の夢」を提示する
ネガティブな理由(辛い、合わない)ではなく、「自衛隊では絶対に叶えられない夢」を提示する方法です。
例文2:専門職・資格取得への挑戦
「入隊当初から興味のあった〇〇(ITエンジニア、医療関係など)の仕事に就くため、来春から専門学校に通うことが決まりました。年齢的にも今がラストチャンスだと考えています」
【ポイント】 「決まりました」「ラストチャンス」と言い切ること。 「迷っている」と見せたら負けです。「もう次のレールに乗っている」という既成事実を見せることで、「じゃあ応援するしかないな」という空気に持ち込みます。
【注意】「精神的に辛い」は諸刃の剣
適応障害経験者の私としては、本当に辛いなら正直に言うべきだと思います。 しかし、「ただ辞めたいだけ」の手段としてメンタル不調を使うのは危険です。
なぜなら、自衛隊には手厚い医療体制があるからです。 「辛いです」 「じゃあ医務室へ行こう」 「しばらく休んで様子を見よう」 「部隊を変えてやろう」

こうやって、「辞めさせないための配慮」をされてしまい、かえって辞めるタイミングを失う(沼る)ケースが多々あります。 即座に辞めたいなら、メンタルよりも「物理的な事情(家庭・進路)」の方が、手続きはスムーズに進む傾向があります。
退職理由書の書き方(テンプレート)
自衛隊では、口頭での報告の後に「退職願(退職理由書)」を書くことになります。 ここはシンプルに徹しましょう。
退職願
退職理由: 一身上の都合により(または、家業継承のため / 進学のため 等)、退職したく、ここにお願い申し上げます。
退職希望日: 令和〇年〇月〇日
所属・階級・氏名: 〇〇部隊 〇〇士長 竹久夢藤 ㊞
長々と情熱的な文章を書く必要はありません。 書類はあくまで事務的なものです。 勝負は、書類を出す前の「上官との面談(口頭での伝え方)」で決まっています。
まとめ:脱柵(脱走)するな、堂々と去れ
自衛隊には「脱柵(だっさく)」という言葉がありますね。耐えきれずに基地から逃げ出すこと。 気持ちはわかりますが、それをすると後が大変です。
あなたは犯罪者ではありません。 職業選択の自由を持つ、一人の国民です。
辞めることは「裏切り」ではありません。 自衛隊で培った体力、根性、礼儀。それは民間(シャバ)に出ても間違いなく通用する「最強の武器」です。 私のような元社長から見れば、元自衛官というだけで「おっ、根性ありそうだな」と採用したくなります。
だから、堂々と戦略的に嘘をつき(方便を使い)、胸を張って営門を出てください。 次のステージが、あなたを待っています。


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