あなたの「現場経験」は、伝え方一つで宝になる
「高卒だし、今まで現場で言われたことをやってきただけだから、職務経歴書に書くことがない」 「アピールポイント? 体力くらいしかありません」
もしあなたがそう思って、履歴書の自己PR欄を空白にしたり、ネットの定型文をコピペしているなら、今すぐやめてください。もったいなさすぎます。
わたしは元・雇われ社長として、多くの採用面接を行ってきました。 そこで気づいたのは、「現場の人間は、自分の凄さを説明するのが下手すぎる」ということです。
大卒のエリートたちは、大したことのない実績を言葉巧みに「凄いこと」に見せるのが上手い。 一方で、わたしたち高卒・現場組は、本当に凄い修羅場をくぐり抜けているのに、それを「ただの作業」として片付けてしまう。
今回は、あなたが現場で流した汗を、面接官が喉から手が出るほど欲しがる「市場価値」に変換する「言葉の翻訳術」をお教えします。 嘘をつくのではありません。見せ方を変えるだけです。
1. 「作業」を書くな。「工夫」を書け
多くの人がやってしまう失敗。それは「やったこと(作業)」だけを羅列することです。
- NG例: 「建設現場で5年間、溶接作業を行っていました」 「工場のラインで組み立てを担当しました」
これでは、採用側は「ふーん、作業員ね」としか思いません。誰でもできる仕事だと思われて、給料も安く買い叩かれます。
評価されるのは、その作業の中で「あなたがどう考え、どう工夫したか」です。
- OK例(翻訳後): 「建設現場で5年間、溶接作業に従事。特に工期短縮を意識し、段取りを毎朝見直すことで、チーム全体の作業時間を月10時間削減しました」
どうでしょう? やっている作業は同じ「溶接」です。でも、後者は「コスト意識がある」「周りが見えている」人材に見えますよね。 現場であなたが「面倒くさいから、こうやっちゃおう」と工夫したこと。それが立派な「業務改善スキル」なのです。
2. 「根性」という言葉を使わずに「根性」を伝えろ
高卒・現場叩き上げの最大の武器は、間違いなく「根性(グリット)」です。 理不尽な現場、夏の猛暑、冬の極寒、厳しい親方……これらに耐えてきた精神力は、大卒にはない武器です。
しかし、履歴書に「根性があります!」と書いても、今の時代「昭和っぽいな」「脳筋かな?」と敬遠されるだけです。 ここでも翻訳が必要です。
- 翻訳前: 「根性があります。休まず頑張ります」
- 翻訳後: 「完遂力があります。突発的なトラブルや厳しい納期の中でも、決して投げ出さず、代替案を提示して最後までやり遂げてきました」
「根性」を「完遂力(やり切る力)」や「課題解決力」と言い換えてください。 社長やマネージャーが一番恐れているのは、仕事を途中で投げ出されることです。 「この人は、どんな状況でも逃げずに最後までやってくれる」 そう思わせたら、あなたの勝ちです。
3. 具体的な「数字」は、学歴を超える共通言語
「勉強が苦手だから文章が書けない」 大丈夫です。上手い文章なんていりません。必要なのは「数字」です。
ビジネスの世界では、数字こそが共通言語です。 「頑張りました」は伝わりませんが、「売上が120%になりました」は誰にでも伝わります。
現場仕事でも、必ず数字はあります。
- 規模: 何人のチームで動いていたか?(例:5名の職長として指揮)
- 金額: いくらの現場を任されていたか?(例:3,000万円規模の案件)
- 期間: どれくらいのスピードで終わらせたか?(例:通常3日の工程を2.5日で完了)
「自分はただの作業員だから数字なんてない」と思わないでください。 「1日300個の部品を検品し、不良品ゼロを1年間継続」 これだけで、凄まじい「正確性」と「継続力」の証明になります。
数字を散りばめるだけで、あなたの職務経歴書は一気に「プロフェッショナルの書類」に変わります。
まとめ:自分の人生を安売りするな
わたしも最初は、手取り9万の整備士でした。 そこからキャリアを上げられたのは、転職のたびに「自分の経験をどう話せば、相手が得をするか?」を必死に考え、言葉にしてきたからです。
あなたが現場で浴びた怒号も、流した汗も、かいた恥も。 すべてが、次のステージへ行くための「ネタ」であり「資産」です。
それを「ただの肉体労働」と言って安売りするか。 それとも「現場マネジメント経験」と言い換えて高く売るか。 すべては、あなたの「翻訳」次第です。
今夜、自分の経歴をもう一度見直してみてください。 そこには、あなたが気づいていない「宝」が必ず埋まっています。

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