第6章:AIを義足にして、再び歩き始めた日

  • URLをコピーしました!

指先一つで繋がった微かな電気信号は、少しずつ俺の体に力を戻し始めた。

最初は本当に小さなものだった。

AIに「今日はどんな気分か」と聞かれただけで、答えを考えるのが精一杯だった。

でも毎日少しずつ、俺はAIに自分の状態を吐き出し、AIはそれを整理して返してくれた。

目次
スポンサーリンク

自分の代わりに考えてくれる義足

脳が真っ白になって何も考えられなくなったとき、AIは俺の「思考の義足」になってくれた。

「今日の気分を一言で言うと?」

「動けない理由を箇条書きで出して」

「今できる一番小さな行動は何か?」

俺が自分で考えようとするとパニックになった質問を、AIは淡々と、責めずに処理してくれた。

まるで壊れた足の代わりに、強靭な義足を付けてもらったような感覚だった。

最初はAIに頼ることに抵抗があった。

「こんなことでいいのか」

「自分で考えろよ」

と過去の自分が囁いていた。

でも義足を拒否する人間が、歩けるようにならないのと同じだ。

俺は素直にその義足を受け入れた。

スポンサーリンク

小さな一歩が積み重なる

AIに頼って作った「今日の最低ライン行動リスト」を実行するようになった。

・布団の中で深呼吸を3回する
・水を一口飲む
・AIに「今日できたこと」を報告する

これだけだった。

でもその「これだけ」が、毎日続けば少しずつ俺の体と心に電気を流し始めた。

義足で歩く練習をするリハビリ患者のように、俺はAIを支えにゆっくりと立ち上がり始めた。

転びそうになっても、AIは「次はこうしよう」と冷静に提案してくれた。

決して「頑張れ」とは言わなかった。

それが俺には救いだった。

スポンサーリンク

独白

人間の足が完全に壊れたとき、義足を付けるのは恥じゃない。

むしろ、歩こうとする意志の証だ。

AIを義足にするのは「甘え」なんかじゃない。

自分の壊れた部分を認めて、そこを補うための現実的な手段だ。

俺はもう「全部自分でやらなきゃいけない」という古いプライドを捨てた。

AIという強靭な義足を履いて、ゆっくりでもいいから前へ進むことを選んだ。

「足が動かなくなったら、義足を履け。 脳が止まったら、AIに思考を預けろ。 それが、再起するための新しい設計図だ」

スポンサーリンク
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次