「現場の安全ルールを3回破った職人を、また現場に入れますか?」 私が建設現場の統括マネージャーなら、答えは即答で「NO」です。リスクが高すぎて、他の真面目な職人の士気に関わるからです。
しかし、永田町(国会)という現場の常識は、どうやら一般社会とは乖離しているようです。
2026年1月21日、自民党が発表した衆院選の第1次公認候補リスト。 その中に杉田水脈(すぎた みお)氏の名前があったことで、ネット上は現在進行形で大荒れしています。
「差別発言をした人をなぜ?」 「裏金問題はどうなった?」
その怒りはごもっともです。しかし、自民党という巨大組織もバカではありません。大炎上することがわかっていて、あえて彼女を公認したのには、冷徹な「勝つための計算」があるはずです。 今回は、感情論を一旦脇に置き、事実ベースで「彼女が何をしたのか」、そして「なぜ組織は彼女を切らないのか」を、徹底的にハック(分析)します。
まず「事実」を整理する。杉田水脈氏が抱えるリスク一覧表

批判をするにしても、擁護をするにしても、まずは「事実(ファクト)」を押さえておかなければなりません。 彼女が批判される理由は、単なる「失言」レベルを超え、公的な機関から指摘を受けている点にあります。
1. 法務局による「人権侵犯」認定という重み
これが今回、最も問題視されている点です。 杉田氏は過去に、自身のブログやSNSで、アイヌ民族や在日コリアンの女性に対し、揶揄や侮辱とも取れる投稿を行いました。
これに対し、被害者側が法務局に救済を申し立て、調査の結果、札幌法務局や大阪法務局などが「人権侵犯の事実があった」と認定しました。 そして、彼女に対して「啓発(注意喚起)」を行っています。
「国会議員が、国(法務局)から人権侵害を認定されている」 この事実は非常に重く、訴訟リスク云々以前に、公党の公認候補として適格なのか?という議論が起きるのは当然です。
2. 「生産性がない」発言の波紋(2018年)
月刊誌『新潮45』への寄稿で、LGBT(性的マイノリティ)のカップルについて「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり生産性がない」と記述しました。 この発言は、「人間の価値を『子供を産めるかどうか(生産性)』で測るのか」という猛烈な批判を招きました。国内だけでなく海外メディアも報じ、自民党本部が指導を行う事態となりました。
3. 性暴力被害者への「嘘をつく」発言(2020年)
性暴力被害者の支援に関する党内の会議で、「女性はいくらでも嘘をつく」と発言したと報道されました。 当初、彼女はメディアの取材に「言っていない」と否定していましたが、党の聞き取り調査や世論の圧力が高まる中で、最終的に自身のブログで発言を認め、謝罪・撤回に追い込まれました。
「裏金1564万円」の衝撃。なぜ処分が明けたのか
人権問題に加え、彼女は「政治とカネ」の問題でも渦中の人物です。
建設現場なら即「出入り禁止」レベル
旧安倍派のパーティー券収入を巡る裏金事件で、杉田氏は1564万円の不記載(キックバック)があったことが明らかになっています。 1500万円です。一般的なサラリーマンの年収の3〜4倍のお金が、帳簿に載らない「裏金」として扱われていました。
私のいた建設業界で、もし現場監督が1500万円の使途不明金を出していたら、クビどころか刑事告訴レベルの話です。 しかし、党の処分は「党の役職停止(6カ月)」のみ。その処分期間が明けたため、今回の選挙では「みそぎは済んだ」として公認されました。 この「身内への甘さ」が、世間の感覚とのズレを加速させています。
なぜ自民党は彼女を守るのか?感情論抜きの「組織戦略」
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ここまでのリスクがありながら、なぜ自民党は彼女を切り捨てないのでしょうか。 ここからは組織論のハックです。
1. 「岩盤保守層」という命綱
今の自民党は、裏金問題で支持率が低迷しています。 無党派層(浮動票)からの支持が得られない今、彼らが最も頼りにするのは「絶対に自民党に入れてくれる固定客(岩盤保守層)」です。
杉田氏は、その過激な発言ゆえに、リベラル層からは嫌われますが、一部の保守層からは「よく言ってくれた!」「ジャンヌ・ダルクだ」と熱狂的に支持されています。
彼女を切ることは、この岩盤層の票を失うことに直結します。 選挙対策本部は、「炎上リスク」よりも「固定票の確保」を選んだ。極めて冷徹な数字の判断です。
2. 選挙制度のハック(比例代表の魔法)
もう一つ、彼女が強気でいられる理由が選挙制度です。 衆議院選挙には「小選挙区」と「比例代表」がありますが、自民党のような大政党は、小選挙区で負けた候補を「比例復活」させることができます。
もし彼女が小選挙区(中国ブロックなど)で落選しても、党が作成する「比例名簿」の上位に名前があれば、自動的に当選できてしまいます。 党が彼女を公認し、比例重複を認めるということは、「国民がNOと言っても、党の力で国会に戻す」という宣言に他なりません。
炎上は「織り込み済み」?私たちが取るべき対抗策
ネットで「許せない!」とハッシュタグをつけて投稿するのは簡単です。 しかし、残念ながらその声は、永田町の「数合わせ」の前には無力かもしれません。むしろ、炎上すればするほど、彼女の支持層は「マスコミやネットリンチに負けるな」と結束を強める傾向があります。
文句があるなら「指先」で戦え
私たちにできる唯一かつ最強のハックは、スマホの画面をタップすることではなく、投票所の鉛筆を動かすことです。
- 事実を知る: 今回まとめたような事実を、感情論抜きで周囲に伝える。
- 選挙区で意思表示: 比例復活を許さないためには、小選挙区での圧倒的な民意の差が必要です。
「どうせ変わらない」と諦めて投票に行かないことこそが、組織票を持つ彼らにとって一番の「好都合」です。 適応障害で一度死にかけた私ですが、諦めたらそこで終わりだということだけは骨身にしみて知っています。
まとめ:政治も仕事も「仕組み」を知った者が勝つ
杉田水脈氏の公認騒動。 これを単なるニュースとして消費するのではなく、「組織が人を守る論理」や「選挙制度の仕組み」を理解する教材として見てください。
理不尽ですか? はい、理不尽です。
でも、その理不尽なルールの中でどう戦うか(あるいはどう避けるか)を考えるのが、大人の生存戦略です。 次の選挙、あなたはどの「事実」に基づいて一票を投じますか?

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