「予算がないから、みんなで仲良く貧しくなろう」
日本の組織が陥りがちな、最も愚かなマネジメントです。
2026年2月20日の毎日新聞などで報じられた、滋賀県大津市の条例改正案が波紋を呼んでいます。
市は、約400人いる市立幼稚園教員の給与を、
「保育士の水準に合わせて見直す(実質的な賃下げ)」
という方針を打ち出しました。
SNS等では「違う。逆だ。保育士の給与を上げるんだよ!」と批判が殺到し、炎上状態になっています。
元現場監督の視点から言わせてもらえば、この市の決定は「組織を壊す最悪の悪手」です。
今回はこの問題の構造をハックします。
なぜ「低い方に合わせる」のか?現場崩壊のメカニズム
そもそも、大津市はなぜこんな理不尽な提案をしたのでしょうか。
市の言い分は「幼稚園教諭と保育士の給与の均衡を図り、人材の流動化を促すため」です。
待機児童ワーストの街で「賃下げ」という狂気
報道によれば、大津市は「待機児童数全国ワースト」という不名誉な記録を抱えています。
つまり、圧倒的に「保育を担う職人(人手)」が足りていない非常事態なのです。
そんな火の車のような現場で、既存のスタッフの給与を下げればどうなるか。
「そうですか、ではお隣の市や、もっと給料の良い民間に行きますね」
で終わりです。
人材が流動化するのではなく、市外へ「流出」するだけです。
優秀な職人は、安い賃金の現場には決して居着きません。
コストカットを「均衡(フェアー)」と言い換えるな
本来、職種間の格差を是正するなら「低い方(保育士)の給与を引き上げて、高い方(幼稚園教諭)に合わせる(ベースアップ)」のが筋です。
予算がなくてコストカットしたいだけなのに、それを「職員間の公平性(均衡)」という耳障りの良い言葉でコーティングするから、現場の怒りを買うのです。

労働組合(教組)の反論に感じる「違和感」
一方で、この賃下げに反対する県教組(労働組合)の反論の仕方にも、私は組織論として少し違和感を覚えました。
「幼稚園は特別」という分断のロジック
教組は反対の理由として、
「市立幼稚園は、特別な支援が必要な子供らの受け皿でもある。十分な説明をせず待遇を悪くしてよいのか」
と主張しています。
当事者としては必死の抵抗だと思いますが、この言い方だと
「幼稚園教諭は特別な(難しい)仕事をしているから高くあるべきで、保育士と差があるのは当然だ」
という分断(マウント)の論理に聞こえかねません。
特別支援が必要な子供のケアで日々神経をすり減らし、重労働をこなしているのは、保育園の保育士だって全く同じはずです。
欠けているのは「共に上へ」の連帯
ここで組合が本当に主張すべきだったのは、「私たちの給与を下げるな」という自己防衛ではなく、
「私たちの給与水準を維持したまま、安すぎる保育士の給与をここまで引き上げろ!」
という連帯のメッセージです。
「低い方に合わせるな、共に上へ引き上げろ」。
この発想がなければ、市側の「じゃあ格差をそのまま放置するのか」という論理に押し切られ、保育士と幼稚園教諭の間で不毛な対立を生むだけです。

まとめ:職人を舐めた現場は必ず崩壊する
大津市の「悪平等」による賃下げ案は、コストを削って人を動かそうとする「設計ミス」の典型例です。
子供の命と成長を預かる保育・教育の現場は、社会の最も重要なインフラです。
そこを「安かろう悪かろう」で回そうとすれば、最終的なツケ(事故や待機児童のさらなる増加)は全て市民に跳ね返ってきます。
2026年度からの施行に向けて議論が続くようですが、大津市がこの「最悪の手」を撤回し、正しく職人(保育者)に投資する設計図を引き直すことを、元現場監督として強く願います。

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